2003.07.17

スタチンに閉経後女性の骨折予防効果なし、「WHI」観察研究が示唆

 約9万人の閉経後女性を対象とした米国の前向き観察研究で、心血管疾患の既往や人種、年齢、体重など易骨折性に影響を与え得る因子で補正しても、スタチンの服用者と非服用者の骨折頻度に差がないことが示唆された。動物実験で骨量の増加が示されたスタチン系薬だが、骨粗鬆症が臨床上問題となる閉経後女性に対し、骨折予防効果はあまり期待できないようだ。研究結果は、Annals of Internal Medicine誌7月15日号に掲載された。

 この観察研究は、閉経後女性を対象に、米国国立心臓肺血液研究所(NHLBI)が実施している「WHI」(Women's Health Initiative)試験の一環として行われたもの。「WHI」試験には昨年一部が中断された介入研究(関連トピックス参照)と観察研究とがあり、今回発表されたのは観察研究の参加者に対する解析結果だ。

 「WHI」観察研究の参加者は、50〜79歳の閉経後女性9万3716人。試験参加時に7864人がスタチン系薬を服用していた。スタチン系薬の服用者は非服用者より高齢で体重が重く、心血管疾患の既往者が多かった。追跡期間の中央値は3.9年。

 その結果、腰部や手首などの骨折頻度は、年齢で補正するとスタチン服用者と非服用者(8万5780人)とに差がないことが判明。多変量解析による補正を加えても、スタチン系薬服用者の骨折のハザード比は腰部で1.22(95%信頼区間:0.83〜1.81)、下腕部・手首で1.04(同:0.85〜1.27)、その他の臨床的な骨折で1.11(同:1.00〜1.22)となり、スタチン系薬の服用に骨折の予防効果は認められなかった。

 また、試験参加者のうち6442人については、試験参加時に骨量を測定した。しかし、スタチン系薬の服用者と非服用者では、多変量解析で補正後はどの部位の骨量にも有意な差は現れなかった。

 スタチン系薬による骨量の増加が最初に報告されたのは1999年で、骨形成因子(BMP)や内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)を介して骨量を増加すると考えられている(関連トピックス参照)。しかし、この骨量増加作用が臨床的な意味を持つかどうかは不明確で、心血管疾患のハイリスク者を対象としたスタチン系薬のプラセボ対照試験のメタ分析からは、骨折予防効果の有無を結論付けるだけのデータは得られていない。

 さらに、スタチン系薬の介入試験の対象者は男性が圧倒的に多く、骨粗鬆症による骨折が臨床的に問題となる閉経後女性への効果を論じるにはデータ不足だった。今回、観察研究とはいえ、9万人以上の閉経後女性に対する前向きな追跡結果が出た意義は大きく、「これまでに得られたエビデンス(cumulative evidence)は、スタチン系薬を骨粗鬆症の治療や予防に用いることを支持しない」と研究グループは結論付けている。

 この論文のタイトルは、「Statin Use, Clinical Fracture, and Bone Density in Postmenopausal Women: Results from the Women's Health Initiative Observational Study」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.7.11 NHLBIが臨床試験「WHI」を早期中断、ホルモン補充療法に乳癌、心血管疾患の予防効果なし
◆ 2001.8.20 日本骨代謝学会速報】スタチンの骨量増加作用、BMP-2とeNOSが関与−特別講演より

■ 参考トピックス ■
◆ 2002.3.20 ACC '02速報】スタチンの骨形成作用にビタミンD依存性、日本人対象の臨床研究が示唆

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