2003.07.16

遺伝子発現プロファイルの解析で、腎臓の同種移植片に対する急性拒絶に新たなサブタイプを示唆

 腎臓の同種移植片に対する急性拒絶には、まだ不明な点が多い。この解明のため、DNAマイクロアレイを使い生検標本を調べたところ、これまでの臨床的病理学的な知見では明確に区別できなかった急性拒絶パターンが、遺伝子発現パターンの違いによって説明され、その差異は浸潤するリンパ球の組成と活性化の違いからくることを示唆する論文が発表された。この研究は、Stanford大学のM. Sarwal氏らによるもので、7月10日付のNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

 急性拒絶は、宿主の免疫系細胞が移植片に浸潤することにより移植片が傷んでいく過程を指す。これを機に、移植片内に複数の反応が起こり、慢性拒絶から移植片の喪失に至る。急性拒絶は通常、移植のすぐ後で起き、遅延型過敏反応と細胞毒性などの細胞性免疫反応の二次反応だと考えられている。急性拒絶の原因と臨床経過は多様で、臨床的、病理学的知見から移植の結果を予測するのは容易ではない。そこで著者らは、まだ明らかにされていない分子レベルの違いが、腎同種移植片の急性拒絶の臨床経過と治療に対する反応の多様性を引き起こしているのではないかと推測した。

 Sarwal氏らは、4歳から22歳までの患者50人から67の同種移植片生検標本を採取、遺伝子発現パターンを調べた。遺伝子発現試験にはDNAマイクロアレイを用い、約912の遺伝子を反映する1340個の選別された相補DNA断片の発現パターンに従い、それぞれの標本の遺伝子発現プロファイルを比較した。正常腎の遺伝子発現パターンは、正常な腎臓を切り取った標本から得た。これらのプロファイルを分析するのにバイオインフォマティクスの方法を用いた。

 その結果、急性拒絶、薬剤の腎毒性、慢性移植片腎症および正常腎に関連する遺伝子発現パターンには一定の差異があることがわかった。急性拒絶と関係する遺伝子発現パターンには少なくとも三つの異なるサブタイプがあり、それは免疫系の活性化と細胞拡散の差異によって区別できる急性拒絶の型を示していた。

 この急性拒絶の差異は光学顕微鏡では区別できない。免疫系細胞の浸潤の組成に多様性があることから、さらに上記のサブタイプを特定するために免疫組織化学染色法を用いた。これにより、濃いCD20+B細胞染色が生検標本の約3分の1に見られ、特に臨床上のグルココルチコイド抵抗性(p=0.01)および移植片喪失(p<0.001)との間には際立った関係があることがわかった。

 特にB細胞の濃いクラスターの存在が重度の移植片拒絶と関係していたことは予想外で、急性拒絶にB細胞の浸潤が重要な役割を果たしていることを示唆していた。このことからSarwal氏らは、CD20染色を用いることによって、急性拒絶の危険が高い患者を特定し、より適した治療が行える道が開けるだろうと期待している。また、CD20+B細胞の浸潤がある患者では、坑CD20モノクローナル抗体(rituximab)を用いた早期治療が有効かも知れないともみている。

 遺伝子発現プロファイルの解析により、急性拒絶には新しくサブタイプが見つかり、CD20+リンパ球凝集があると移植片がうまく働かないことがわかった。これらの知見は、治療の個別化をさらに改善する方向に向けるものだ。遺伝子発現プロファイル法は急性拒絶の新しい研究の道を開き、他の移植片機能障害をより良く理解する方法を提供することにつながる。

 この論分のタイトルは、「Molecular Heterogeneity in Acute Renal Allograft Rejection Identified by DNA Microarray Profiling」。アブストラクトは、http://content.nejm.org./cgi/content/short/349/2/125まで。(千田柳子、医学リポーター)

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