2003.07.11

β遮断薬間で慢性心不全予後改善作用は異なるか、注目の「COMET」研究が発表 

 2種類のβ遮断薬間で、慢性心不全患者の予後改善作用を直接比較した「COMET」(Carvedilol Or Metoprolol European Trial)研究の結果が、Lancet誌7月5日号に掲載された。比較対象となったβ遮断薬は、カルベジロール(わが国での適応商品名:アーチスト)と酒石酸メトプロロール(わが国での商品名:セロケンなど、心不全への適応なし)。当初より第一評価項目だった「死亡」はカルベジロール群で相対的に17%減少したが、後から加えられた第一評価項目「死亡+入院」では、両群間に有意差はないとの結果になった。

 「COMET」の対象は、NYHA心機能分類が2〜4度、左室駆出率(EF)が35%未満で、原則としてアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と利尿薬とを服用している慢性心不全患者3029人(平均62歳、EF:26%)。カルベジロール群(1511人)とメトプロロール群(1518人)に無作為割り付けし、二重盲検法で平均58カ月間追跡した。薬剤の投与量は、カルベジロールは6.2mg/日(分2)、メトプロロールは10mg/日(分2)から開始し、それぞれ50mg/日(分2)、100mg/日(分2)を目標に増量した。

 その結果、第一評価項目の一つである「死亡」は、カルベジロール群の34%に対しメトプロロール群では40%。カルベジロール群で相対的に17%、有意に減少した(p=0.0017)。カルベジロール群における死亡の減少は、試験開始6カ月後から認められた。

 「死亡」の詳細を見ると、カルベジロール群では「心血管系死亡」が有意に減少しており(29%対35%、p=0.0004)、「非心血管系死亡」は両群間に差を認めなかった。サブグループ別の比較では、性別、年齢、NYHA、基礎心疾患などで分けた場合、いずれのサブグループにおいても死亡率はカルベジロールで減少傾向を示し、NYHA2度では有意に減少していた。

 なお、試験開始後に新たに第一評価項目として加えられた「死亡+入院」は、カルベジロール群で74%、メトプロロール群で76%と差がなかった。

 研究グループは、β遮断薬間の比較で生命予後改善作用に差が生じた理由として、両薬の薬理特性に違いがある点を指摘する。具体的には、カルベジロールがβ1、β2受容体をブロックしα受容体もブロックするのに対し、メトプロロールは選択的にβ1受容体をブロックする。

 メトプロロールは「MERIT-HF」(Metoprolol CR/XL Randomised Intervention Trial in Heart Failure)研究で、慢性心不全患者の生命予後をプラセボよりも改善しているが、この際に用いられた剤型は「COMET」研究で用いられた短時間作用型とは異なり、1日1回投与型の徐放錠だ(JAMA;283,1295,2000)。「MERIT-HF」におけるメトプロロール徐放錠の目標用量は200mg/日で、研究グループによると、これは「COMET」で用いられた短時間作用型メトプロロールの130mg/日に相当するという。

 このため、「COMET」ではメトプロロールの最大用量が低かった可能性もあるが、「MERIT-HF」のサブ解析では、メトプロロール徐放錠100mg/日以上の患者群(平均192mg/日)と以下の群(平均76mg/日)で死亡率減少作用が同等だったとの報告がある(JACC;40,491,2002)。徐放錠の76mgは短時間作用型メトプロロールの51mgに相当するとのことで、平均用量が85mg/日だった「COMET」のメトプロロールは不十分な用量ではなかったと考えられる。

 一方、「MERIT-HF」の研究者らは、「MERIT-HF」におけるメトプロロールの予後改善作用の一部は徐放錠であった点に負うとしており、メトプロロール徐放錠のβ受容体ブロック作用は短時間作用型よりも強力だとするデータもある(J Cardiovasc Pharmacol;41,151,2003)。

 「COMET」研究は、8月31日から9月3日までオーストリアで開催される欧州心臓学会(ESC)でも報告が予定されている。その際、研究者達が交わす議論に注目したい。

 この論文のタイトルは、「Comparison of carvedilol and metoprolol on clinical outcomes in patients with chronic heart failure in the Carvedilol Or Metoprolol European Trial (COMET): randomised controlled trial」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

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