2003.07.09

【耳鼻咽喉科臨床学会速報】 アレルギー性鼻炎患者に対する予防的免疫療法でスギ花粉症の発症抑制を実現

 耳鼻咽喉科臨床学会の2002年度学会賞授与式と受賞記念講演が7月4日に行われ、近畿大学医学部奈良病院耳鼻咽喉科の中井義紀氏が受賞した。受賞テーマは「免疫療法による花粉症の発祥予防とその機序―スギ花粉感作成立個体に対する予防的免疫療法」というもの。中井氏は1997年卒業で、受賞研究も大学院在籍中に進めたものだという。

 スギ花粉症は、健康な状態からいきなり発症するのではなく、スギ花粉に曝露して感作が成立し、体内にスギ花粉特異的IgE抗体が産生されていながら花粉飛散時期に鼻症状の憎悪が見られない「花粉症予備軍」(無症候性花粉症)の状態を経て発症に至ると考えられている。スギ花粉症患者が人口の15〜20%であるのに対し、花粉症予備軍は、実に人口の3〜4割に及ぶという。中井氏の研究は、この予備軍に対する免疫療法を実施した場合に発症予防が可能かどうかについて有効性と機序の検討を行ったもの。

 通年性アレルギー性鼻炎患者で、かつスギ花粉に対する感作だけが成立している無症候性スギ花粉症を合併している67人を2群に分け、一方は経過観察群(n=32)として標準化ダニエキスを投与し、他方は予防治療群(n=35)として、標準化ダニエキスに加えてスギ花粉エキスを投与した。予防治療群はさらに、3年以上スギ花粉エキスを投与している長期予防群と、投与が3年未満の短期予防群に分類した。

 翌年の杉花粉症シーズンに経過観察群では32例中7例が発症したのに対し、予防治療群では1人も発症せず、発症が有意に抑制された。サイトカイン量を調べたところ、経過観察群の中で新たにスギ花粉症を発症した群では、健常人に比べ、IL-4とIL-5が有意に増加しており、経過観察群で症状の発現がなかった無症候群ではIL-4は有意に増加していたが、IL-5は増加していなかった。これに対して、短期予防群ではIL-4は有意に増加していたが、IL-5増加はなく、長期予防群ではIL-4、IL-5とも有意な増加はなかった。

 中井氏は「スギ花粉予防的免疫療法は、感作が成立し、IL-4産生が増大している患者に対して、IL-4産生を抑制し、それによって花粉症の発症を予防しうることが示唆された」と結論付けている。減感作療法を発症前に用いることで、花粉症患者の増大を防ぐことができれば、治療薬剤費や症状発現によるQOL低下などによる経済的損失の抑止効果は計り知れない。より大規模な試験によるエビデンスの確立や、他のアレルギー性疾患への応用など今後の発展が期待される。(中沢真也)

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