2003.07.03

除細動で救命の院外心停止患者、長期的なQOLは一般人とほぼ同等

 街角など病院外で心停止を起こしたが、自動体外式除細動器(AED)で救命され、生存退院した人では、長期的な生活の質(QOL)は同年齢層の一般市民と変わらないことがわかった。生存率も、院外心停止を起こした事がない同年齢・同病の人と変わらなかったという。院外AED生存者の長期予後が明らかになったのは初めて。たとえ心停止を起こしても、救命されれば元の生活に戻れることを示す結果で、AEDの普及にはずみが付きそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌6月26日号に掲載された。

 米国では、医師の指示がなくても除細動を行えるAEDが「蘇生の鎖」(Chain of Survival)の一つとして位置付けられており、救急車に搭載されているほか、街頭や公共施設に誰でも使用できる形(パブリックアクセス)のAED設置が進められている(関連トピックス参照)。AEDにより心停止患者の救命率を高められるためだが、「命を救っても、その後のQOLは大きく損なわれるのではないか」との疑念もあった。

 そこで、米国Mayoクリニック(Minnesota州Rochester)のT. Jared Bunch氏らは、AEDで救命、生存退院した院外心停止患者を長期追跡。生存率やQOLを評価した。調査期間は1990年11月から2000年12月までの約10年間で、この間に管轄地域(人口約20万人)で心停止を起こした人は330人。うち200人がAEDの適用となる心室細動を起こしていた。

 AEDを受けた200人中、145人(72%)はその場で心拍が再開。病院に運ばれ、7人は救急センター内で、54人は入院中に亡くなったが、84人(42%)は生存退院した。AED導入前の同地区の生存退院率は約27%で、救急体制の良好さを反映してか高い水準にあったが、AEDの導入でそれをさらに高められることが示唆された。生存退院した人のうち5人には神経学的な障害が残ったが、79人は神経学的な合併症を起こさずに退院できた。

 合併症がなかった79人では、平均4.8年間の追跡期間で19人が死亡、60人が生存しており、5年生存率は79%となることが判明。この5年生存率は、同じ年齢・性別の一般米国人の5年生存率(86%)よりは有意に低かったが、年齢・性別をマッチさせた同病者とはほぼ同じだった。

 次に研究グループは、全般的な健康関連QOLを評価する「SF-36」調査票を用い、長期生存者の健康関連QOLを調べた。すると、同じ年齢・性別の一般米国人よりも劣っていたのは「活力」(Vitality)に関する項目だけで、「全般的健康度」(General health)や身体機能(Physical functioning)、「精神状態」(Mental health)など他の七つの下位尺度(サブスケール)では違いが認められないことがわかった。

 以上から研究グループは、AEDの導入で生存退院率を高められるだけでなく、救命されれば一般市民とほぼ同じQOLの生活を長期的に送ることができると結論付けている。

 AEDは、心電図の測定器と除細動器が一体化した装置。心臓発作が疑われる人の体に電極を装着すると、自動的に心電図を測定し、心室細動が起こっていれば除細動スイッチを押すよう知らせる仕組みになっている。わが国では医師、救急救命士のほか、航空機内では客室乗務員が使用できる(医師がいない場合のみ)。

 さらに、この4月からは、事後検証や救急救命士の再教育を行う体制などが整備された地域では、救急救命士が除細動を行う際に医師の指示が不要となった(関連トピックス参照)。「蘇生の鎖」の一つとして、わが国でもAEDが根付く素地がようやく整ったと言えそうだ。

 この論文のタイトルは、「Long-Term Outcomes of Out-of-Hospital Cardiac Arrest after Successful Early Defibrillation」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.3.6 AHAとACSM、スポーツ施設への除細動器設置を勧告
◆ 2002.12.18 救急救命士による気管挿管を限定的に容認へ

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