2003.06.29

みそ汁に乳癌の予防効果か、日本のコホート追跡研究が示唆

 みそ汁を毎日3杯以上飲む女性は、ほとんど飲まない人よりも、乳癌になる確率が4割少ない−−。そんな興味深いデータが、日本人の中高年女性約2万人を前向きに追跡したコホート追跡研究から明らかになった。みそ汁などの大豆食品に含まれる「イソフラボン」という成分に、乳癌を予防する効果があるためとみられている。研究結果は、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)誌6月18日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、国立がんセンター研究所がん情報研究部の山本精一郎氏ら。厚生労働省の多目的コホート研究「JPHC」(Japan Public Health Center-based prospective study on cancer and cardiovascular diseases)の参加者データに基づき、みそ汁や豆腐、納豆などの大豆食品の摂取量・頻度と乳癌発症率との関連を調べた。

 対象者は、日本の4地区に住む40〜59歳の女性2万1852人。1990年1月に、大豆食品を週にどれくらい摂取しているか、自記式のアンケートに回答してもらった。その後、1999年12月まで追跡したところ、179人が乳癌を発症した。

 アンケートでは、大豆食品を「みそ汁」と「大豆、豆腐、油揚げ、納豆」(みそ汁以外の大豆食品)に分けて、週当たりの摂取頻度を調査。みそ汁については、「ほぼ毎日」と答えた人に、1日何杯飲むかを尋ねた。大豆食品をたくさん摂る人は、あまり摂らない人よりも高齢で、食習慣にも違いがあったため、解析は年齢や食習慣などを補正した上で行った。

 その結果、みそ汁を1日3杯以上飲む中高年女性では、1日1杯未満の人よりも、乳癌の発症率が4割低い計算になることが判明。みそ汁とその他の大豆食品を合わせ、含有イソフラボン量で4群に分けて解析した場合も、最大摂取群は最小摂取群より乳癌発症率が54%低くなる計算になった。一方、みそ汁以外の大豆食品については、「週2食未満」より「ほぼ毎日」の人で乳癌発症率が2割低い計算になったが、この差は統計学的には誤差の範囲だった。

 大豆食品の中ではみそ汁だけに乳癌の予防効果がみられたとの結果だが、研究グループは、この違いが食品の差ではなく設問の違いによって生じたと考えている。みそ汁の「1食」(1杯)の量にあまり個人差はないが、他の大豆食品は、食品や料理の種類によって「1食」の量にばらつきが生じ、データが不正確になりがちだからだ。

 日本人は米国白人よりもイソフラボンを700倍多く摂取しているが、日本人の乳癌発症率は米国白人よりもはるかに低いことが知られている。また、イソフラボンには女性ホルモン様の作用があり、動物実験で乳癌を抑制する効果が示されている。調査開始時に閉経前だった人と閉経後の人とで分けて解析すると、閉経後の人で乳癌予防効果がはっきり現れており、研究グループは、今回みられた予防効果は主にイソフラボンによると考察している。

 この論文のタイトルは、「Soy, Isoflavones, and Breast Cancer Risk in Japan」。アブストラクトは、こちらまで。厚生労働省の多目的コホート研究「JPHC」に関しては、こちらまで。(内山郁子)

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