2003.06.26

「プロスカー」に前立腺癌予防効果、NEJM誌で原著論文が早期公開−−PCPT試験より

 前立腺肥大症治療薬の「プロスカー」(一般名:フィナステリド、本邦未発売)に、前立腺癌の発症予防効果があることが、約2万人を対象とした米国のプラセボ対照試験から判明した。研究結果はNew England Journal of Medicine(NEJM)誌7月17日号に掲載される予定で、このほど同誌ホームページ上で早期公開された。

 フィナステリドは、男性ホルモンを活性化する酵素である5α還元酵素の阻害薬。低用量製剤の「プロペシア」(日本では2003年3月に承認申請)は、初の“飲む発毛薬”として知られる。7年間の追跡期間で、「プロスカー」の服用者では前立腺癌の発症が25%低いことが判明。一方、中〜低分化癌の比率や実数も服用者で多く、「癌は減るが、いったん癌になると予後が悪い」との悩ましい結果になった。

 この臨床試験「PCPT」(Prostate Cancer Prevention Trial)は、1994年から始まった、最大規模の前立腺癌予防介入試験。55歳以上の男性2万4482人を登録、うち前立腺特異抗原(PSA)値が3.0ng未満で、直腸診で前立腺肥大が認められない低リスク男性1万8882人を、プラセボ群とフィナステリド群(1日量:5mg)とに無作為に割り付けた。

 試験期間は7年間で、対象患者はフィナステリドまたはプラセボを連日服用し、年に1回経過観察を受けた。直腸診やPSA値の上昇などで前立腺癌が疑われた場合は、生検で確認。試験完了時にも生検を行い、前立腺癌の発症率を1次評価項目として両群を比較した。2003年2月に開かれた評価委員会で、両群間に有意差が認められ、かつ試験を続行しても結果が変わらないとの判断が下されたため、試験は早期中断。その時点までに最終生検を終えていた9060人が解析対象となった。

 解析対象者はフィナステリド群が4368人、プラセボ群が4692人で、年齢層は両群とも55〜59歳、60〜64歳、65歳以上がほぼ3分の1ずつ。9割強が白人で2割弱に前立腺癌の家族歴があった。PSA値は両群ともほぼ半数が0〜1ng。

 その結果、フィナステリド群の前立腺癌発症率は18.4%と、プラセボ群(24.4%)より有意に低いことが判明(相対リスク低下率:24.8%、95%信頼区間:18.6〜30.6%)。フィナステリドの服用で前立腺癌が、実質的に(substantial)減少することが確認できた。発症率はPSA値の上昇に伴い高くなったが、発症予防効果はPSA値によらず認められた。

 副作用に関しては、フィナステリド服用群で勃起障害(ED)や性欲減退など、性機能への影響が有意に多かった。逆に、良性の前立腺肥大や尿貯留などの排尿障害は、プラセボ群で有意に多かった。

予後の悪い癌は実薬群で増加、予防薬としての適応は微妙に

 ただし、前立腺癌の病理学的悪性度を反映するGleasonスコアが7以上、つまり予後が悪いと予測される癌の比率は、フィナステリド群で見付かった前立腺癌の37.0%を占め、プラセボ群の22.2%を有意に上回った(相対リスク:1.67、95%信頼区間:1.44〜1.93)。解析対象者全体に占める比率も、フィナステリド群で6.4%、プラセボ群で5.1%となり、実数としてもフィナステリド群で有意に多くなった(相対リスク:1.27、95%信頼区間:1.07〜1.50)。

 この結果について研究グループは、「(Gleasonスコアが高い)高グレード癌の増加幅の絶対値は、前立腺癌の発症率低下幅の絶対値よりも小さい」ことをよく考慮すべきだと強調する。一方、論説執筆者の米国Sloan-Kettering癌センターのPeter T. Scardino氏は、明確な機序は不明なものの、フィナステリドが高グレード癌の増大を促進する恐れを指摘する。

 さらに、性機能障害のリスクは増えるが、排尿障害や前立腺肥大のリスクは減ることも、同薬を健康な男性が前立腺癌予防に用いる際に考慮すべき点に加わる。Scardino氏が「今後もジレンマは続く」と指摘する通り、癌予防薬としての前途は微妙な状態にあると言えそうだ。

 この論文のタイトルは、「The Influence of Finasteride on the Development of Prostate Cancer」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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