2003.06.23

【日本老年医学会速報】 糖尿病合併のMI既往者、高齢でもβ遮断薬で心事故が減少

 近畿大学循環器内科の宮高昌氏らは、同大学で15年間に管理した陳旧性心筋梗塞(MI)患者約8000人分のデータを後ろ向きに解析。約3割が65歳以上の高齢者で、うち3割が糖尿病を合併していたが、β遮断薬を処方した人では年齢や糖尿病の有無によらず心事故が少ないことがわかった。研究結果は、6月20日の一般口演「疫学・予防疫学・健康増進」で報告された。

 解析対象患者の総数は7802人で、男性が6315人、女性が1487人。1986〜2001年の受診患者だが、同大学循環器内科では、この期間に一環して、MI既往者に対し可能な限りβ遮断薬を処方する方針を採っていた。平均年齢は59.1歳、平均観察期間は13.3カ月で、心事故は致死性・非致死性のMI、心臓突然死、心不全死と定義した。

 全体を65歳未満の若年者群(5427人)と65歳以上の高齢者群(2375人)に分けると、若年者群の65%、高齢者群の54%にβ遮断薬が処方されていた。糖尿病の合併率は若年者群が約3割、高齢者群が3割弱とほぼ変わらず、β遮断薬の処方の有無にも影響していなかった。

 β遮断薬の処方の有無で差があった背景因子をみると、β遮断薬非服用者では血圧が低く、心拍数が高く、心不全が多く(Forresterの分類、Killipの分類でクラス1が少ない)、血栓溶解療法や冠動脈インターベンション術(PCI)の施行が少なく、冠動脈バイパス術(CABG)を受けた人が多かった。冠危険因子では高脂血症、高血圧、喫煙がβ遮断薬服用者よりも少なかった。

 心事故の年間発生率を評価すると、若年者で糖尿病がある場合、β遮断薬非服用者が3.9%なのに対し、服用者は2.3%で、β遮断薬の服用者では心事故発生率が低い傾向があることが判明(有意差なし)。糖尿病がない若年者でも同様の傾向が認められた。高齢者でもほぼ同じ傾向がみられ、糖尿病のない高齢者では心事故発生率に有意な差が認められた(4.5%対2.3%、p<0.05)。

 次に宮高氏らは、「糖尿病を合併した高齢者」を対象に多変量解析を行い、薬剤ごとに他の因子で補正した場合の心事故発生率を評価した。高齢者では半数がカルシウム(Ca)拮抗薬、6割弱が硝酸薬、8割弱が抗血小板薬、3割弱がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、2割弱がワルファリンカリウム、3割が高脂血症治療薬を服用している。

 その結果、糖尿病合併高齢者の場合、β遮断薬の服用で心事故が65%減る計算になることが判明(ハザード比:0.35、95%信頼区間:0.12〜0.99)。抗血小板薬でも67%の減少効果が認められた(ハザード比:0.33、95%信頼区間:0.12〜0.92)。一方、高脂血症治療薬や硝酸薬、ワルファリンカリウム、ACE阻害薬、Ca拮抗薬では、有意な影響は認められなかった。

 β遮断薬は徐脈や心不全を引き起こすことがあり、高齢者への処方がためらわれる傾向がある。また、糖尿病患者に対しても、低血糖症状をマスクしたり、インスリン感受性を悪化させることがあるなど、使用を躊躇するケースが少なくないという。しかし、「β遮断薬は糖尿病合併者や高齢者でも、若年患者と同様に心事故発生率を低下させた」と宮高氏は結論。高齢者や糖尿病合併者に対しても、MIの2次予防にβ遮断薬を処方すべきだとした。

 発表後の質疑応答では、糖尿病合併者にβ遮断薬を投与した場合、糖代謝への悪影響はみられなかったかとの質問が出された。これに対し、宮高氏は「あくまで印象だが、空腹時血糖値やヘモグロビンA1cでみる限り、β遮断薬投与で糖尿病が悪化したとの印象はない」と回答した。

 また、ACE阻害薬に心事故予防効果が認められなかった点にも質問が出されたが、「今回は1986年からの解析であり、最初の数年はACE阻害薬があまり使われていなかったためではないか。最近のデータだけで解析すると、少し良いデータが出ている」と宮高氏は述べた。(内山郁子)

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