2003.06.23

【日本老年医学会速報】 “前糖尿病状態”からの2型糖尿病発症、高齢者と若年者で機序に差か−−端野・壮瞥町研究より

 空腹時高血糖(IFG)、耐糖能異常(IGT)やインスリン抵抗性(IR)があると、こうした「糖尿病発症の危険因子」がない人よりも2型糖尿病の発症率が高くなるが、高齢者に限ってはIRがあっても2型糖尿病の発症リスクはあまり高くならないことがわかった。日本を代表する地域コホート研究の一つ、北海道の「端野・壮瞥町研究」から判明したもの。6月20日の一般口演「疫学・予防疫学・健康増進」で、札幌医科大学第二内科の大西浩文氏らが発表した。

 解析対象は、1991年に住民健診を受診し、11年後の2002年にも受診した両町の住民720人から、1991年時点で既に糖尿病にかかっていた人を除いた659人。1991年の健診では、空腹時と75gブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間後の血糖値やインスリン濃度を調べ、IFGなどの糖尿病発症危険因子の有無を評価している。今回は、11年後の糖尿病発症にこれらの危険因子がどう影響するかを年齢層別に評価した。

 1991年時点での対象者の平均年齢は56.9歳。60歳未満の非高齢群(387人)と60歳以上の高齢群(272人)に分けると、非高齢群の平均年齢は51.6歳、高齢群は64.4歳となった。男性比率は非高齢群が36.7%、高齢群が44.5%。体格指数(BMI)や血圧、空腹時血糖値(FPG)や空腹時インスリン濃度(FIRI)は高齢群で有意に高かった。

 大西氏らはIFGを「FPGが110〜125mg/dl」、IGTを「FPGが126mg/dl未満かつOGTTの2時間血糖値が200mg/dl未満」と定義。すると、11年後に糖尿病を発症していた人(2002年健診でFPGが126mg/dl以上または糖尿病の治療を受けている人)は、「IFGとIGTのどちらも持たない人」(601人)からは20人(3.3%)のみで、IFGやIGTがないと将来の2型糖尿病発症率は低いことがわかった。

 一方、IGTのみがある人(34人)では、17.6%が11年間で糖尿病を発症した。この数値は、10年間で50%が糖尿病を発症するとされる欧米ほどではないが、やはり危険因子がない人よりは糖尿病発症率が高いことが明らかになった。IFGのみの人(12人)では25%、IFGとIGTの両者がある人(12人)では50%が糖尿病を発症した。

 また、OGTTの2時間インスリン濃度が64μU/l以上の人を「IRあり」と定義すると、全体では40人にIRがみられた。IRがない619人の糖尿病発症率は11年間で4.5%だったが、IRがある人では17.5%で、IRも糖尿病発症の危険因子であることが裏付けられた。

高齢者ではIFGとIGTのみが2型糖尿病発症の予測因子に

 次に大西氏らは、高齢群と非高齢群とで、危険因子別の糖尿病発症率を調べた。その結果、IFGやIGTがあると、高齢者でも非高齢者と同様に糖尿病発症率が高いことが判明。ところが、IRに関しては、非高齢者ではIRがあると糖尿病発症率が有意に高くなるのに対し、高齢者では高くなる傾向のみで有意差には至らなかった。

 そこで大西氏らは、高齢群と非高齢群のそれぞれについて、多変量解析で年齢や性別、BMIを補正し、糖尿病発症との関連を評価した。すると、非高齢者ではIFG、IGTとIRのすべてが将来の糖尿病発症に関与していたのに対し、高齢者ではIFGとIGTのみが発症予測因子として浮上、IRは有意な因子とならないことがわかった。

 この結果について大西氏は「IRがある人の2型糖尿病発症機序は、IRのために代償性にインスリン分泌が亢進し、膵臓のβ細胞が疲弊するというもの。『60歳以上でIRがある人』は、逆に言えばIRがあっても60歳までに糖尿病を発症しなかった、つまりβ細胞がタフな人と考えられ、その後の糖尿病発症に対するIRの影響が少なかったのではないか」と考察。IFGやIGTがある人は、年齢によらず2型糖尿病発症のハイリスク群として注意深く経過観察すべきだが、「高齢者のIR」は必ずしもハイリスク群として管理しなくてもよいのではと述べた。(内山郁子)

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