2003.06.20

【日本老年医学会速報】 アルツハイマー病のAAVワクチンが開発、疾患モデルマウスで効果と安全性を確認

 国立療養所中部病院長寿医療研究センターの原英夫氏、田平武氏らは、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)にβアミロイド蛋白の遺伝子を組み込み、腸管で発現させる、アルツハイマー病の新規ワクチンを開発。疾患モデルマウスを使った検討で、1回経口投与すれば半年間抗Aβ抗体が産生され、脳に沈着したAβ(老人斑)も投与群で有意に少ないことを確認した。昨年中止された「AN-1792」の臨床試験(関連トピックス参照)でみられたような脳髄膜炎や、他の臓器への傷害は認められず、安全性が高いことも確認されたという。研究結果は、6月19日の日本老年学会シンポジウム3「アルツハイマー病のワクチン療法−−基礎と臨床」で発表された。

 アルツハイマー病は、Aβが脳組織に繊維状に蓄積(プラーク)した老人斑と、タウ蛋白の異常リン酸化による神経原線維変化を特徴とする、進行性の脳機能障害だ。数年前に、Aβに対する抗体がプラークに結合すると、ミクログリアがAβを貪食してプラークが退縮することが発見。Aβを抗原として用い、抗Aβ抗体を体内で産生させるワクチン療法が脚光を浴びた。「AN-1792」はAβを直接投与するタイプのワクチンだ。

 原氏らが開発したワクチンは、「AN-1792」とは異なり、Aβを粘膜免疫系に認識させて抗体を産生させるよう工夫したもの。今回検討されたワクチンは2種類で、一つは自然に存在するAβのうちアルツハイマー病の発症に強く関与すると考えられているAβ1-42、もう一つはAβ1-42からT細胞の抗原決定基(エピトープ)となる部分を除いたAβ1-21を、腸管で分泌するよう加工した遺伝子を使った。ベクター(遺伝子の運び手)には、遺伝子治療での使用経験が豊富で、人に対する安全性が確認されているAAVを用いた。

 原氏らはこのワクチンを、加齢に伴いアルツハイマー病を自然発症するAβ過剰発現マウスに経口投与。マウスを3群に分け、15週齢、30週齢または45週齢で1回だけワクチンを混ぜた餌を食べさせ、生後13カ月で犠牲死させて効果や安全性を調べた。

 その結果、Aβ1-42ワクチン、Aβ1-21ワクチンのいずれも、投与マウスでは老人斑がほとんど認められないことが確認。効果は投与タイミングに依存せず、抗Aβ抗体の産生は投与後半年以上継続した。

 経口投与したAAVワクチンは、小腸のパイエル板の抗原提示細胞に速やかに取り込まれ、分泌されたAβは腸管の上皮細胞に局在していた。脳組織へのT細胞の浸潤はなく、脳髄膜炎や他の臓器の炎症もみられなかったという。

 以上から原氏は「AAVでAβを腸管特異的に分泌させることで、Th1型T細胞を活性化させることなく、液性免疫のみを惹起できる」と結論。「AN-1792」並みの有効性を持った、より安全なワクチンとして十分期待できるとした。

 原氏らは今後、よりヒトに近いサルを使った安全性確認試験を行い、安全性が確認されれば臨床試験を開始する。ただし、AAVワクチンは遺伝子治療に当たるため、実施には国の承認が必要になる。臨床開発は、製薬企業と共同で進める予定だ。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.6.20 日本老年病学会速報】アルツハイマー病ワクチン「AN-1792」、副作用で中止の前期第2相試験結果の詳細が報告

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