2003.06.20

【再掲】【日本DDS学会速報】 低強度超音波の照射で分子量4万の物質の皮膚透過を実現 

 1cm2当たり300mW以下という低強度の超音波をかけることで、分子量が約4万という大きな分子が、角質を含む皮膚全層をそのまま透過する−−。こんな研究結果が6月19日に開催された日本DDS学会のポスターセッションで報告された。現在はヘアレスラットの摘出皮膚に対する実験段階だが、臨床応用が実現すれば、化粧品から慢性疾患治療まで適用範囲は広そうだ。城西大学薬学部の上田秀雄氏が発表した。

 上田氏らの研究グループは、既に2002年に、分子量623の水溶性化合物を用いて、超音波による透過度向上を確認した研究成果を発表している。報告内容は、1.超音波照射時には約300nmol/cm2/時と、透過量が非照射時の約2万3000倍に増大した、2.照射を終了すると速やかに元の状態に戻った、3.透過は照射方向と強い関連性が見られ、照射方向と逆方向の透過も増大したが、透過量は10〜20分の1程度と少なかった、など。

 今回の発表では、新たに分子量が約4400と約3万8000のテスト物質の透過度と、超音波によって発生する微細な泡(キャビテーション)の影響を確認した。

 その結果、分子量が大きい化合物の水溶液でも透過速度は、水のみの場合や分子量623の化合物水溶液の場合と変わらなかった。しかも、透過の前後で分子に変化は見られなかった。これだけ大きな分子が角質を含む膜自体を透過したとは考えにくい。上田氏も「透過のメカニズム解明は今後の課題」としながらも、「汗腺、あるいは毛穴を通過した可能性がある」としていた。

 一方、超音波を水に対して照射した場合、水に含まれる空気などによってキャビテーションが発生する。あらかじめ脱気(水から空気を取り除く操作)してキャビテーションの発生を抑えたところ、分子量623の物質の移動速度が約13分の1、水の移動は約8分の1と有意に低下したことから、キャビテーションが水や物質透過に関与している可能性が明らかになった。

 上田氏は、「従来の研究では、超音波による物質の皮膚透過促進は皮膚組織の破壊によって起こるとする報告が多かったが、我々の観察から、超音波によって何らかの駆動力が発生し、それに乗って物質移動が起きている可能性がある」としている。

 超音波をかけている間だけ、皮膚を破壊せずに大きな分子をそのまま透過させることができる意義は大きい。本研究グループの実験系では、水溶液の透過量は1cm2当たり1時間で1〜2mlにもなる。今後、生体における血中移行の確認ができれば、化粧品などの局所浸透促進だけでなく、様々な薬剤の投与に利用できる可能性がある。また、少ないとはいえ、超音波照射とは逆方向の物質移動も促進することから、無侵襲のセンサーとしても応用できるかもしれない。今後の成果が期待される。(中沢真也)

■訂正■
発表者の氏名に誤りがありました。正しくは上田秀雄氏です。訂正いたします。

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