2003.06.20

【日本DDS学会速報】 プラチナ錯体系抗癌剤のリガンド付きリポソーム化で血中濃度と癌組織移行性を大幅向上 

 抗癌剤のオキサリプラチン(oxaliplatin)は腎毒性が見られないという利点があるものの、血中からの消失が極めて早い。そこで、トランスフェリンを結合させてリポソーム製剤化したところ、半減期が10時間程度確保でき、マウスを用いた実験で腫瘍増殖抑制効果の増強が確認できたという。帝京大学薬学部の滝澤知子氏が6月19日のポスターセッションで報告した。

 オキサリプラチンは日本では未承認のプラチナ錯体系抗癌剤で、CDDPなどとは異なり腎毒性が見られないことから、海外では優れた治療成績を上げている。しかし、投与後ほぼ数分間で血中から消失してしまうという欠点がある。

 滝澤氏らの研究グループは、血中滞留時間と癌組織指向性を高める目的で、リポソーム製剤化を図り、さらにリポソーム表面にポリエチレングリコール(PEG)を修飾し、PEG末端にリガンドとしてトランスフェリンを結合させたTf-PEGリポソーム製剤を作成した。

 癌を発現させたマウスに5mg/kgを静注したところ、オキサリプラチン単体では、投与直後に血中濃度が2μg/ml程度になるのに対し、リポソーム化した場合には、10時間後でも10μg/ml以上、PEGリポソームとTf-PEGリポソームでは20μg/ml以上と、長時間、高い血中濃度を維持できた。また、癌組織中のオキサリプラチン濃度を調べたところ、オキサリプラチン単体投与の場合は、癌組織1g当たり最高でも1μg以下で30時間後にはほぼ消失したのに対し、Tf-PEGリポソーム製剤では、投与後、一貫して濃度が上昇し続け、72時間後には癌組織1g当たり10μgに達し、なお上昇傾向にあった。

 滝澤氏によれば、オキサリプラチンを実際の患者に投与する場合、血中からの消失が早いことから2時間以上をかけて点滴するが、Tf-PEGリポソーム製剤では1回静注で済む可能性があるという。しかも癌組織への移行性がオキサリプラチン単体よりはるかによいことから、投与量を大幅に減らし、副作用を低減できる可能性もある。臨床応用が待たれる製剤と言ってよいだろう。(中沢真也)

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