2003.06.18

【現地報告】 ESH/ESC高血圧ガイドライン、ESH会長が関連声明を発表

 イタリアMilanoで開催された欧州高血圧学会(ESH)で6月16日、同学会の会長であるJose L. Rodicio氏は、先頃公表されたESHと欧州心臓病学会(ESC)合同の高血圧ガイドライン(関連トピックス参照)に関する声明を発表した。

 声明の中でRodicio氏は「本ガイドラインで最も重要なメッセージは、利尿薬、β遮断薬、カルシウム(Ca)拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬、そしてα遮断薬から、患者の病態に最も適した薬剤を選び得るとしたところだ」と明言。利尿薬を事実上の第一選択薬として強く推奨する米国高血圧ガイドライン(JNC7)との違いを強調した。

 ESH/ESCガイドライン作成委員長のGiuseppe Mancia氏は、この点について、同ガイドラインに関するプレナリー(必須)セッションで次のような説明を行った。すなわち、薬剤選択には合併症や忍容性などに加え、「コストの問題」や「患者の好み」も反映されるというのだ。

 またMancia氏は、同セッションにおいてJNC7で採用された「高血圧前症」についても言及。「『前症』という言葉を用いるならば、健康な人は全て何らかの『疾患前症』だ」と皮肉った。

「複雑すぎる」ガイドラインは今後普及するか?

 さて、会長声明においてRodicio氏は「このガイドラインは広く受け入れられるだろう」との予測を示したが、現実は厳しいようだ。ESH/ESCガイドラインの印象をESHに参加したドクター数名に尋ねたところ、「複雑すぎる」という声が少なくなかった。

 この点について、ESH/ESCガイドラインに近い形をとるWHO/ISHガイドライン(1999年公表)の浸透度に関し、本学会で興味深い報告があった。

 報告はイタリアMilano大学のB. Severgnini氏らによるもので、Lombardy郡の一般開業医に対するアンケート調査の結果だ。5133人に調査票を送付し、1256人(24.5%)より回答があった。

 まず、WHO/ISHガイドラインの認知度だが、「よく知っている(familiar)」と回答したのは48.2%だった。半数が「ガイドラインをわかっている」と認識していたわけだが、同ガイドラインの内容に関する設問(「その他」を含む5者択一での選択式)では、「高齢者の診療所正常血圧上限」の正答率は27%、「家庭血圧での正常血圧上限」に至ってはわずか4%だった。

 それにも関わらず、「満足できる血圧コントロールを達成」と、63.8%が回答している。WHO/ISHガイドラインが推奨する「少なくとも140/90mmHg未満」との降圧目標値が、実際の臨床現場で達成されている率はきわめて低いと考えられる。

 また、フランスFaculte Broussais Hotel DiuのI.Clombet氏からは、リスクの層別化に関する興味深い報告が行われた。心血管系イベント既往のない例の心血管系予後予知因子として、血圧以外では「年齢」、「性別」の重みが著明に高く、それ以外の危険因子を考慮しても心血管イベント予知率は有意に増加するものの、増加率はさほど大きくないというものだ。

 この指摘が正しければ、ESH/ESCガイドラインを特徴付ける、「血圧値だけでなく、種々の危険因子や合併症を勘案して患者の絶対リスクを層別化する」点のメリットは、どれほどのものになろう。

 現在35歳以上74歳以下の44%が、高血圧(140/90mmHg以上)と報告される欧州だが(JAMA;14,2363,2003)、ESH/ESCガイドラインの公表によりこの割合がどこまで低下するかを引き続き見ていきたい。(宇津貴史、医学レポーター)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.6.16 ESH/ESCの欧州版高血圧GLが発表、「高血圧前症」を用いず旧来通りの血圧分類を採用

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