2003.06.17

スタチンが糖尿病患者の心血管疾患も予防−−HPS研究サブ解析より

 心血管疾患のハイリスク者を対象としたスタチンの大規模介入試験「HPS」(Heart Protecition Study、関連トピックス参照)の、糖尿病患者に対するサブ解析結果が、Lancet誌6月14日号に掲載された。平均総コレステロール値がさほど高くない糖尿病患者でも、シンバスタチン(わが国での商品名:リポバス)の服用で、心血管イベントが相対的に22%抑制されるとの結果になった。

 同試験の対象総患者数は約2万人で、うち約6000人は糖尿病を合併しており、糖尿病患者に対するスタチンの介入試験としては過去最大規模。約3600人の糖尿病患者を含む「ALLHAT-LLT」研究( Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial--Lipid Lowering Trial)や、約2500人が含まれる「ASCOT-LLA」研究(Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial-- Lipid Lowering Arm、関連トピックス参照)では、糖尿病患者に対するスタチンの心イベント抑制効果は示されておらず、「HPS」試験が糖尿病患者に対する有意な効果を示した初の大規模介入試験となった。

 「HPS」試験の組み入れ条件は、総コレステロール値が3.5mmol/l(135mg/dl)以上で、冠動脈疾患などの閉塞性動脈疾患や糖尿病など、心血管疾患の危険因子を一つ以上持つ40〜80歳の男女。登録患者のうち5693人(29%)が糖尿病を合併していた。今回のサブ解析では、糖尿病の合併の有無で、スタチンによる心イベント抑制効果などを比較した。

 糖尿病合併者の平均年齢は62歳と、非合併者の64歳より2歳若く、男性比率(70%)は非合併者(78%)より低い。2割に心筋梗塞の既往があり、他の血管系疾患は3割が合併していたが、半数には糖尿病以外の心血管疾患危険因子はなかった。9割が2型糖尿病で、半数は血糖が良くコントロールされていた(ヘモグロビンA1cが7%未満)。平均総コレステロール値は5.7mmol(220mg/dl)。

 無作為に2群に分け、プラセボまたはシンバスタチン1日40mg(日本の承認用量の2〜8倍)を連日服用したところ、平均4.8年間の追跡期間中に主要心血管イベントの発症が糖尿病合併者で22%有意に抑制。非合併者(25%)にほぼ匹敵するイベント抑制効果があることが確認できた。

 脳卒中や心筋梗塞など、イベントを個別にみた場合も、有意な抑制効果が現れた。こうしたイベント抑制効果は、心筋梗塞などの血管系疾患がない糖尿病患者や、組み入れ時のLDLコレステロール値が低い(3.0mmol/l=116mg/dl未満の)糖尿病患者でも、同様に認められた。なお、総死亡や心血管死亡に関しては、今回のサブ解析論文には記されていない。

 また、糖尿病患者では腎機能障害も主要な合併症の一つだが、腎機能をクレアチニン値で評価すると、糖尿病合併者では両群とも追跡期間中に腎機能が低下。しかし、低下幅はシンバスタチン服用群で有意に少なく、シンバスタチンに腎障害の進行予防効果があることが示唆された。一方、非合併者の糖尿病発症率はシンバスタチン服用群とプラセボ群とで変わらず、糖尿病の発症予防効果は認められなかった。

 以上から研究グループは「(血管系疾患の合併の有無やコレステロール値など)幅広い背景を持つ糖尿病患者で、シンバスタチンの1日40mg投与は、主要な心血管イベントを約4分の1減少する」と結論。コレステロール値によらず、全ての糖尿病患者にスタチン療法をルーチンに考慮すべきだとした。

 この論文のタイトルは、「MRC/BHF Heart Protection Study of cholesterol-lowering with simvastatin in 5963 people with diabetes: a randomised placebo-controlled trial」。アブストラクトは、こちらまで。「HPS」研究の関連情報は、「HPS研究のホームページ」からも入手できる。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.7.8 HPS研究が待望の論文化、米の高脂血症治療ガイドラインにも影響か
◆ 2003.4.4 高血圧合併心疾患ハイリスク者、スタチンの投与で心イベントが4割減少−−「ASCOT-LLA」研究より

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