2003.06.17

【SARS速報】 グリチルリチンに抗SARSウイルス効果、試験管内実験で示唆

 漢方薬の7割弱に配合されているカンゾウ(甘草)の主成分、グリチルリチンに、SARSウイルスの増殖抑制効果があることがわかった。培養細胞を使った試験管内実験で、SARSの治療に使われている抗ウイルス薬のリバビリン(わが国での商品名:レベトール)などよりも、SARSウイルスの増殖を効果的に抑制したという。研究結果は、Lancet誌6月14日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、ドイツFrankfurt大学ウイルス医学研究所のJ. Cinatl氏ら。ウイルスの培養・分離によく使う実験細胞である、ミドリザル腎臓由来のベロ(Vero)細胞にSARSウイルスを感染させ、グリチルリチンや他の抗ウイルス薬、免疫抑制薬などについてSARSウイルスの増殖抑制能を調べた。

 効果を評価した薬剤は、6-アザウリジン、ピラゾフリン、ミコフェノール酸、リバビリンとグリチルリチンの5種類。細胞内でウイルスが増殖すると細胞の形が変わるが(細胞変性)、研究グループは、半数のウイルス感染細胞でこの細胞変性を抑制する「50%有効濃度」(EC50)と、薬剤によって半数の細胞が傷害されてしまう「50%細胞毒性濃度」(CC50)を調べた。

 EC50は抗ウイルス効果を発揮する薬剤濃度で、CC50はその薬剤が安全に使える濃度。この比(CC50をEC50で割った「選択性指数」)が大きいほど、細胞を傷つけずにウイルスの増殖のみを抑える効果が高いとみなせる。

 その結果、グリチルリチンの選択性指数は67となり、6-アザウリジン(選択性指数:6)やピラゾフリン(同:12)よりもSARSウイルスに対する選択的な増殖抑制効果が高いことが判明。グリチルリチンには、SARSウイルスの増殖だけでなく、細胞への吸着や侵入という、ウイルス感染の初期過程を抑制する効果もあることがわかった。一方、ミコフェノール酸やリバビリンでは、ベロ細胞感染SARSウイルスに対する増殖抑制効果そのものが認められなかった。

 欧米では「リコリス」(甘草の英名)と呼ばれる、甘草エキスで風味を付けた黒色のゼリー状菓子が古くから食べられており、今回の研究結果は「リコリスがSARSウイルスに効果」と広く報道された。また、わが国では漢方薬のほか、かぜ薬など多くの市販薬にグリチルリチンが配合されており、医療用では肝庇護剤として多くの肝炎患者に投与されている。

 しかし、今回の結果だけからは、グリチルリチンが抗SARSウイルス薬として使えるとの結論は出せない。今回はベロ細胞に感染したSARSウイルスに対する効果が確認されただけであり、少なくともヒトの細胞を使った実験を行わなければ、抗ウイルス活性は予測できないからだ。研究グループは、実験的にSARSウイルスを感染できるヒト細胞株の確立が、今後の研究進展に欠かせないとまとめている。

 この論文のタイトルは、「Glycyrrhizin, an active component of liquorice roots, and replication of SARS-associated coronavirus」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

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