2003.06.13

黄体ホルモン製剤に早産の再発予防効果、プラセボ対照大規模試験で初めて証明

 黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤のカプロン酸17α-ヒドロキシプロゲステロン(17P、わが国での商品名:プロゲデポーなど)に、早産歴がある妊婦の早産再発を予防する効果があることが、米国で行われたプラセボ対照二重盲検試験から明らかになった。同薬はわが国では早産予防薬として使われているが、米国ではエビデンス不足などを理由に米国食品医薬品局(FDA)が早産予防の適応を取り消しており、無作為化試験で明確なエビデンスが得られたのは初めて。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌6月12日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、米国Wake Forest大学のPaul J. Meis氏ら。対象患者は、過去に1度以上早産したことがある、早産ハイリスクの妊婦463人。2対1の割合で実薬群とプラセボ群に割り付け、妊娠16〜20週から17P(1回量250mg、日本の承認用量の2〜4倍)またはプラセボを週1回、36週または出産まで筋肉注射し、早産率や胎児の状態などを比較した。

 その結果、プラセボ群(153人)では54.9%が早産(妊娠37週未満の出産)したのに対し、17P群(310人)では36.3%で、早産リスクを3分の1下げられることが判明(相対リスク:0.66、95%信頼区間:0.54〜0.81)。35週未満(30.7%対20.6%、相対リスク:0.67)、32週未満(19.6%対11.4%、相対リスク:0.58)でも同様に、有意に早産リスクが低くなった。

 生まれた子供が低体重(2500g未満)だったのは、プラセボ群の41.1%、17P群の27.2%で、17P群で有意に少なかった。壊死性腸炎や脳室内出血を起こしたケースや、酸素投与を要したケースも17P群で有意に少なかった。一方、新生児死亡や呼吸急迫症候群、網膜症、敗血症などは、17P群で少ない傾向はあったものの有意差はなかった。奇形は両群とも2%にみられたが、部位は様々で、外性器の奇形は認められなかった。

 なお、副作用は両群共ほぼ半数に生じたが、注射部位の痛みや腫れ、かゆみが大半で、有意差があったのは局所の腫れと硬結のみだった。

 以上から研究グループは「17Pの週1回筋注は、早産歴がある妊婦の早産再発を予防し、生まれた子供の合併症も防ぐ効果がある」と結論。ただし、今回の試験対象者は早産リスクが極めて高い妊婦であり、しかも36.3%は17P投与下でも早産したことを考えると、「黄体ホルモンの血中濃度低下」以外の早産の原因追究や、他の予防策に関する研究も急務の課題だとまとめている。

黄体ホルモン製剤の使用にようやくお墨付き、利益とリスクの説明が必須に

 米国では1930年代から合成卵胞ホルモン(エストロゲン)製剤のジエチルスチルベステロール(DES)が早産予防薬として広く使われており、後に黄体ホルモン製剤も早産予防薬として使われた。ところが、1970年代になって、DES服用妊婦から生まれた子供には外性器の奇形が多く、成人してから癌や不妊症になりやすくなるとの報告が頻出した。

 これを受け、FDAはDES製剤の妊婦への投与を禁止。同時に、「早産予防効果を明確に示す臨床試験がなく、DES製剤と同様に外性器奇形などを誘発する恐れがある」との理由で、黄体ホルモン製剤についても早産予防薬としての適応を取り消した。

 一方の日本は、DES製剤の妊婦への投与は1972年に禁じられたものの、黄体ホルモン製剤については効能取り消しが行われず、いわば「明確な根拠がないまま使われ続けてきた」との経緯がある。今回、習慣性早産が疑われる早産ハイリスク者への予防効果が示され、約500人の中ではあるが外性器奇形も認められなかったことで、一応のお墨付きを得た格好だ。

 ただし、DES製剤で報告されたような「成人後のリスク」が17Pで生じるか否かは不明で、結論を出すには長期追跡研究を待たなければならない。今後は、早産リスクの低減や出生児の脳内出血減少などの「目に見える利益」に加え、不確定なリスクもあることを説明し、納得を得た上で使用するとの姿勢が求められるだろう。

 この論文のタイトルは、「Prevention of Recurrent Preterm Delivery by 17 Alpha-Hydroxyprogesterone Caproate」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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