2003.06.13

お肌に優しい、よく効く美白剤実現へ、ナノテク分子膜でレチノイン酸の刺激低減に成功

 近年、しみ、しわなどに対する治療手段として、ビタミンAの活性型であるレチノイン酸の高い効果が注目を集めている。レチノイン酸のなかでも最も効果が高いとされるオールトランス型レチノイン酸(atRA)は皮膚刺激が強く、塗布した後、しばらくの間、痛みを伴って発赤する場合が多い。光に対して不安定で長期保存ができないという問題点もある。ナノテク技術を用い、薬効を落とさずにこうした副作用を防ぐ新しいレチノイン製剤の開発が国内で進められている。「atRAナノパーティクル製剤(atRA-np)」と呼ばれる物質で、聖マリアンヌ医科大学難病治療研究センターの山口葉子氏(写真)が東京・有明で6月に開催された抗加齢医学会で発表した。

 山口氏らは、まず水溶液中でatRAのミセル(分子の集合体)を作成し、ミセルの表面を1〜2nmと極めて薄い炭酸カルシウムの結晶で覆った。さらに界面活性剤で凝集を防ぎ、直径13nm程度の微粒子を形成した。微粒子中には60〜100個のatRA分子が含まれる。

 この処理によって光に対する安定性が大幅に高まった。水中、またはワセリン中に保存した場合、従来のatRAでは数日で変性がみられたが、atRA-npでは50日近く経っても変化はごく少なかった。

 刺激性も低くなった。ラットに皮下注射する実験で局所の刺激性を確かめたところ、既存のatRAでは腫瘍状の障害が見られたのに対し、atRA-npでは、こうした異常な変化が見られなかった。また、atRA-npは塗布後10分後から血中濃度の上昇が見られ、約3日間血中にあった。皮膚からの浸透性がよく、しかも徐放効果を発揮していると考えてよいだろう。

 刺激性が少ないにもかかわらず、表皮細胞の増殖効果は向上した。マウスの皮膚に5日間塗布し続けたところ、何も塗布しない場合には表皮厚が30μm弱、ワセリンだけを塗布した場合には30μm強、既存の0.1%atRAを塗布した場合には50μm強だったのに対して、atRA-npを塗布した場合には、実に130μm弱と大幅に厚くなり、表皮細胞の増殖を促していることが確認された。

 山口氏らは今後、皮膚のしわやしみに対する薬効の有無を確認する動物実験を進める予定という。人体への適用は先の話だが、低刺激でしわ取りや美白効果の高い外用薬や化粧品に応用できれば、男女を問わず、皮膚のトラブルに悩む中高年者にとって大きな福音になりそうだ。(中沢真也)

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