2003.06.12

1型糖尿病での腎症の進行抑止にACE阻害薬は関係せず−−血圧、コレステロール、血糖の管理がより重要

 1型糖尿病の腎症の進行抑制には、降圧薬の選択よりも、血圧、高脂血症、血糖のコントロールの方が重要である−−。微量アルブミン尿を呈した1型糖尿病患者386人を6年間追跡した研究から、こんな興味深いデータが得られた。追跡期間中に半数以上の患者でアルブミン排泄率の半減が認められるなど、微量アルブミン尿が一定期間出現したからといって、必ずしも不可逆的な腎症には進行しないことも示唆された。この研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌6月5日号に掲載された。

 研究対象は、1型糖尿病患者の早期糖尿病性腎症の予後を調べた「微量アルブミン尿の自然歴に関するJoslin研究」の参加者。研究対象は、1991年1月から1992年4月までに尿検査を受けた1602人(15〜44歳)のうち、評価期間の2年間に既に微量アルブミン尿が確認された312人(有病率コホート)および、追跡開始後4年目までに認められるようになった109人(罹患率コホート)。

 微量アルブミン尿の診断基準は、アルブミン排泄率が30〜299μg/分(43〜430mg/日)の範囲に含まれること。1型糖尿病患者を長期追跡して頚動脈の肥厚などを調べた「DCCT」研究(Diabetes Control and Complications Trial)で用いられた基準(アルブミン排泄率40mg/日以上)と同様のものになっている。

 研究グループは、この「有病率コホート」と「罹患率コホート」を6年間追跡。最初の2年間(第一期間)、次の2年間(第二期間)、最後の2年間(第三期間)のそれぞれの期間で、平均アルブミン排泄率に基づき、患者を1.正常アルブミン排泄率群、2.微量アルブミン尿群、3.蛋白尿群−−の3群に分類した。追跡開始時には、ACE阻害薬を含む降圧薬の服薬状況や血圧値、生化学検査値などを調べた。脱落率は有病率コホートが8%、罹患率コホートが9%で、最終的な評価患者数は386人。

 その結果、追跡期間中にアルブミン排泄率が正常に戻った患者は、再びアルブミン排泄率が上昇した人も含めて、のべ59%(95%信頼区間:54〜64%)に上った。一方で、蛋白尿群に進行した患者はのべ19%(同:14〜23%)になり、尿中アルブミン値が正常化する患者よりも少ないことがわかった。

 次に研究グループは、2年間でアルブミン排泄率が半減した場合を、臨床的に意味のある「減少」と定義して、アルブミン排泄率の減少とベースラインの患者背景の相関を調べた。アルブミン排泄率が減少した患者は、6年間にのべ196人と、全体の58%(95%信頼区間:52〜64%)に達した。

 すると、尿中微量アルブミン量の減少がみられた人では、減少しなかった人よりも若く、血糖コントロールが良好で、総コレステロール値、中性脂肪値も低いことがわかった。平均値はそれぞれ、年齢(減少群:29歳、非減少群:31歳、p=0.02)、ヘモグロビンA1c(HbA1c(8.8%対9.3%、p=0.001)、総コレステロール値(193mg/dl対203mg/dl、p=0.01)、中性脂肪値(109mg/dl対146mg/dl、p<0.001)となり、有意な差となった。しかし、ACE阻害薬を含む服薬状況には、両群間の差は認められなかった。

 さらに、性別やACE阻害薬の服薬状況、追跡当初の尿中アルブミン排泄で補正した多変量解析を行うと、1.総コレステロール値が198mg/dl未満かつ中性脂肪値が145mg/dl未満(ハザード比:2.4、p=0.002)、2.HbA1cが8%未満(同:1.9、p=0.02)、3.収縮期血圧が115mmHg未満(同:1.4、p=0.02)−−の三つの条件で、尿中の微量アルブミン量が減少する確率が有意に高まることが分かった。

 研究グループは、「ACE阻害薬の服薬の有無によらず、血圧、コレステロールや中性脂肪、HbA1cの上昇は、微量アルブミンの増加を引き起こしている可能性が示された。ACE阻害薬の有益とされる薬理作用は、微量アルブミン尿の減少メカニズムには影響しないのではないか」と考察している。

 この論文のタイトルは、「Regression of Microalbuminuria in Type 1 Diabetes」。アブストラクトは、こちらまで。(星良孝、日経メディカル

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