2003.06.11

「高齢化率」より「人口増加率」が医師数のニーズを決める−−加研究

 年を取ると誰でも病気になりやすくなるから、高齢化社会の到来で医療ニーズが増え、医師不足はますます加速する−−。一般に信じられているこの「神話」が、実は正確ではないことが、カナダで行われた研究から明らかになった。研究者らの推計によると、医師需要を決める要因として比重が大きいのは、高齢者数よりも総人口。今後最も需要が大きくなる診療科は胸部外科だという。研究結果は、Canadian Medical Association Journal(CMAJ)誌6月10日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、カナダMcMaster大学経済学部のFrank T. Denton氏ら。Denton氏らは、Ontario州の健康保険組合のデータから、医師が患者の診察にかける時間を、診療科や患者の年齢別に推計。このデータを過去30年間の年齢階級別人口と、今後30年間の予測年齢階級別人口に当てはめ、医師全体の需要増加率や、今後最も需要が増える診療科を予測した。

 その結果、一般に考えられている通り、人は高齢になるほど受診機会が増え、医師が診察にかける時間も増加することが判明。30歳の時と比べ、80歳になると女性では2倍、男性では4倍、医師の診察時間が長くなることがわかった。過去30年間で医師全体の需要は72%増加した。

 ところが、医師需要の増加は主に人口の増加によるものであり、高齢者の増加ではないことも明らかになった。高齢者比率は増えるが、人口の伸びが鈍化する今後30年間では、医師全体の需要は50%程度しか増えないとの予測になった。

 診療科別でみた場合、需要がマイナスに転じる科はないが、小児科(需要増8%)、産婦人科(18%)と精神科(26%)の需要の伸びは平均を大きく下回る。逆に、胸部外科(90%超)、眼科(86%)と泌尿器科(80%)は需要の伸びが平均を大きく上回り、「将来有望な診療科」とみなせることがわかった。

 厚生労働省社会保障・人口問題研究所の予測では、わが国では2007年をピークに人口が減少に転じる(「日本の将来推計人口」)。2002年国勢調査によると、日本の人口の伸びは年率0.2%で、カナダの年率4%(カナダ国勢調査、2001年)を大きく下回る。日本の医師需要は今後どのように変動し、何科のニーズが高いのか−−。「人口減少下での高齢化社会」を一足先に迎えるわが国でこそ、こうした研究は急務の課題ではないだろうか。

 この論文のタイトルは、「Requirements for physicians in 2030: Why population aging matters less than you may think」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

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