2003.05.27

Furberg氏らによる降圧試験メタ分析、最新版がJAMA誌に掲載

 短時間作用型カルシウム(Ca)拮抗薬の危険性を示唆するメタ分析などで有名な、米国Cardiovascular Health Research UnitのBruce M. Psaty氏(米国Washington大学)、Curt D. Furberg氏(米国Wake Forest大学)らによる降圧試験のメタ分析最新版が、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌5月21日号に掲載された。2000年に公表したメタ分析(Lancet;356,1949,2000)は、主として長時間作用型Ca拮抗薬の有用性を検討したものだったが、今回は「第一選択薬としてベストの薬剤は何か」という観点からのメタ分析で、低用量利尿薬が心血管系イベント予防に最も有用であるとの結論となった。

 今回解析の対象となったのは、原則として1995〜2002年に文献化され、脳卒中と心筋梗塞を評価項目に含む降圧無作為化試験。ただし、2000年版のメタ分析の採用基準である「追跡期間2年以上、症例数100例以上」は、今回は用いられなかった。その結果、「ALLHAT」研究(関連トピックス参照)、「ANBP2」試験(関連トピックス参照、最終報告は2003年)までを含む42試験、総計19万2478人を平均3〜4年追跡したデータが解析対象となった。これらの試験で用いられた降圧薬は、利尿薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、α遮断薬とアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬。

 研究グループはまず、降圧薬をすべて合わせた「実薬群」と「プラセボ群」とを比較した。すると、実薬群では「冠動脈疾患」「脳卒中」「心不全」や、これらを併合した「主要心血管系イベント」に加え、「心血管系死亡」「総死亡」という、全ての評価項目で発生率が実薬群で有意に減少していた。なお、脳卒中の発症リスク軽減効果は、実薬群の降圧薬の種類により有意なばらつきがあった(p=0.004)。

「ALLHAT」研究を除外したメタ分析と「ALLHAT」とを比較

 次に研究グループは、低用量利尿薬を基準に、Ca拮抗薬とACE阻害薬に関して「ALLHAT」研究のデータを除いたメタ分析を行い、その結果を「ALLHAT」研究のデータと比較した。「ALLHAT」研究以外のデータについては、利尿薬と同一試験での比較による「直接比較」と、それ以外の「間接比較」とに分けてメタ分析を行った。

 ACE阻害薬と利尿薬との比較では、唯一の直接比較である「ANBP2」試験で、冠動脈疾患と心不全がともに13%、主要心血管系イベントと総死亡がいずれも8%、利尿薬群で増加傾向を示した。一方、「間接比較」のメタ分析では、冠動脈疾患リスクの増加は1%で、その他の3評価項目では逆に利尿薬群で減少傾向を示した。著者らは「間接比較の結果の方が、より『ALLHAT』研究の結果に近い」という点を指摘している。

 Ca拮抗薬の場合、「ALLHAT」研究では減少傾向を認めた冠動脈疾患リスクが、「直接比較」「間接比較」のいずれにおいても利尿薬に比べ増加傾向を示した。同様に減少傾向を示した脳卒中は、間接比較では増加傾向を認めたが直接比較では減少傾向がみられた。心不全は直接比較でも「ALLHAT」研究同様、利尿薬に比べ有意に増加していた。しかし、ACE阻害薬、Ca拮抗薬とも、「直接比較」、「間接比較」、「ALLHAT」研究間で結果が大きく解離した評価項目はなかった。

4年間の治療ならば低用量利尿薬が第一選択

 さらに、「ALLHAT」を含めた全データを用いたメタ分析では、低用量利尿薬に比べいずれかの評価項目のリスクが有意に減少した降圧薬はなく、逆に、ACE阻害薬の「心不全」と「脳卒中」、Ca拮抗薬の「心不全」、α遮断薬の「心不全」は低用量利尿薬に比べリスクが有意に増加していた。A2受容体拮抗薬も低用量利尿薬と各種リスクに有意差はなかったが、十分な検出力を持った解析にはなっていないという。

 以上に加え利尿薬が安価なことから、著者らは「合併症を伴わない高血圧患者が薬物治療を必要とする際には、低用量利尿薬が第一選択である」と結論付ける。しかし、本メタ分析の対象試験には、糖尿病や腎障害を合併した、つまり合併症を伴う高血圧患者に関する臨床試験も含まれている。この点は、米国高血圧学会(ASH)で先日報告された、「BPLTTC」(Blood Pressure Lowering Treatment Trialists Collaboration)最新版(関連トピックス参照)も同様だ。

 さらに、メタ分析の対象となった臨床試験の平均追跡期間は4年程度で、よく指摘される「利尿薬による代謝への悪影響」が長期予後をどの程度変えるかは、このメタ分析からはわからない。2000年の国際高血圧学会(ISH)で「BPLTTC」の初回メタ分析が報告された際、Glasgow血圧研究で有名なGordon T.McInness氏が「短期間のデータをどれほど集めても10年後の予後は推測できない」と発言していたのが思い出される。

 この論文のタイトルは、「Health Outcomes Associated With Various Antihypertensive Therapies Used as First-Line Agents 」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学レポーター)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.12.18 「利尿薬はACE阻害薬、Ca拮抗薬に勝る」−−NHLBIが「ALLHAT」研究結果を発表

◆ 2003.2.18 ACE阻害薬の心血管系イベント抑制作用が利尿薬に優る、併用薬の違いが影響か−−ANBP2試験
より

◆ 2003.5.21 降圧薬比較試験メタ分析「BPLTTC」の新データ公表−−ASH学会


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