2003.05.20

「ALLHAT」研究の性、年齢、人種別サブ解析が公表−−ASH学会

 米国New Yorkで開催された米国高血圧学会(ASH)で5月17日、米国Case Western Reserve UniversityのJackson T. Wright氏らが、「ALLHAT」(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)研究(関連トピックス参照)のサブ解析を報告した。事前に無作為化されていた性、年齢、人種別の解析結果だが、利尿薬の有用性が否定されたサブグループはなかった。

男女とも試験終了時の血圧に有意差、評価項目は二次の「心不全」以外は差なし

 「ALLHAT」研究は、高血圧以外の冠動脈疾患危険因子を一つ以上持つ、55歳以上の高血圧患者4万2418人を対象に行われた世界最大規模の臨床試験。利尿薬のクロルタリドン(わが国での商品名:ハイグロトン)、カルシウム(Ca)拮抗薬のアムロジピン(同:ノルバスク、アムロジン)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬のリシノプリル(同:ロンゲスなど)、α阻害薬のドキサゾシン(同:カルデナリン)の4系統の降圧薬間で無作為化二重盲検試験を行い(α遮断薬群は早期中断)、心血管疾患の予防効果を比較している。

 今回発表された男女別の解析では、試験終了時、男性(1万7719人)の血圧値はクロルタリドン群(133.0/75.5mmHg)に比べ、アムロジピン群で+1.3/-0.9mmHgだった(有意)。一次評価項目の「非致死性心筋梗塞または冠動脈疾患死」発生の相対リスクには両群間で差はなく、二次評価項目も「心不全」がアムロジピン群で有意な増加(相対リスク:1.41、95%信頼区間:1.24〜1.61)を示した以外、有意差はなかった。

 一方、リシノプリル群の血圧はクロルタリドン群と比べ+1.1/-0.6mmHgと、有意な差はなかった。評価項目は、「心不全」が有意に増加した(相対リスク:1.19、95%信頼区間:1.03〜1.36)のを除けば、冠動脈イベント(第一評価項目、血行再建術施行、狭心症による入院)、心血管系イベント(冠動脈イベント、心不全、末梢動脈疾患)、末期腎疾患発生リスクはクロルタリドン群と有意差を認めなかった。

 女性(1万5638人)でも同様で、クロルタリドン群(135.1/75.4mmHg)と比べた血圧は、アムロジピン群0.0/-0.7mmHg(有意差なし)、リシノプリル群+3.3/+0.7(収縮期のみ有意)の差があったが、心不全の有意な増加以外、クロルタリドン群に比べ有意に増加したイベントはなかった。

リシノプリル群では“有意差イベント”に年齢層による違いも

 次にWright氏らは、年齢を「65歳未満」、「65〜74歳」、「75歳以上」に層別化したサブ解析結果を提示した。「ALLHAT」研究では、年齢の層別化が事前に行われている。

 まず「65歳未満」でみると、クロルタリドン群(133.1/77.5mmHg)に比べ、アムロジピン群は+1.7/-1.1mmHg、リシノプリル群+1.9/+0.2mmHg(リシノプリル群の拡張期血圧以外は有意差あり)の血圧差があった。評価項目はアムロジピン群で心不全、リシノプリル群で心不全と脳卒中が有意に増加した以外、有意差は認められなかった。

 アムロジピン群は「65〜74歳」も同様で、心不全が有意に増加するのみだったが、リシノプリル群では、心不全、脳卒中に加え、冠動脈イベント、心血管系イベントがクロルタリドン群に比べ有意に増加していた。クロルタリドン群(134.5/74.6mmHg)と比べたアムロジピンの血圧は-0.2/-0.7mmHg(NS)、リシノプリル群は+1.7/-0.2mmHg(収縮期血圧は有意)だった。

 75歳以上でクロルタリドン群と比較したアムロジピン群の血圧は+0.8/-0.5mmHg(NS)、心不全の増加はこの層でも有意だった。リシノプリル群は+2.9/+0.1mmHg(収縮期のみ有意差)の血圧差で、心不全と心血管系イベントが有意に増加していた。

リシノプリル群とクロルタリドン群とで降圧推移に人種差、降圧外作用も示唆

 「ALLHAT」研究の人種別解析では、黒人でリシノプリル群の血圧がクロルタリドン群に比べ4.0/1.0mmHg高いことがわかり、話題を呼んだ。今回示された血圧の推移を見ると、試験開始1年目におけるリシノプリル群の収縮期血圧はクロルタリドンに比べおよそ6mmHg高かった。一方、非黒人では両群の血圧はほぼ同等だった。

 その結果、黒人における比較では、リシノプリル群でクロルタリドン群に比べ、脳卒中が著明な増加(相対リスク:1.40、95%信頼区間:1.17〜1.68)を示したが、非黒人ではリシノプリル群とクロルタリドン群の脳卒中発症リスクは同等だった(相対リスク:1.00、95%信頼区間:0.85〜1.17)。心不全はいずれもリシノプリル群で有意な増加を認めた。

 アムロジピン群では、黒人・非黒人とも心不全発症が有意に増加する以外、クロルタリドン群と有意差はなかった。

 以上からWright氏は、「いずれのサブグループにおいても、利尿薬を第一選択とすべき」とすると同時に、リシノプリル群とクロルタリドン群の脳卒中発症率の差は、血圧の差だけでは説明できない点を指摘。利尿薬による「降圧以外の有用性」をにおわせた。

「利尿薬のベスト併用薬」を評価する「ALLHAT2」も提案中

 Wright氏の後に登壇した、米国Wake Forest大学のCurt D. Furberg氏は、「ALLHAT」試験結果を踏まえ、次の降圧薬大規模試験として現在「ALLHAT2」を提案中だと述べた。

 「ALLHAT2」では、全例に利尿薬による治療を開始した後、血圧コントロール不良群を、ACE阻害薬、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬、β遮断薬、Ca拮抗薬の4群に無作為に割り付ける。二重盲検法で「利尿薬の併用薬」としてどれが最も優れているかを比較する。利尿薬の併用薬としてCa拮抗薬は好ましくないという「仮説」(Furberg氏)を、予後改善の観点から検証する目的もあるという。

 質疑応答では「各群、イベント発生例の平均血圧を知りたい」との指摘があり、Furberg氏もこれに賛同。「その方向で作業中」と答えた。また、「早期から心不全発症率に差が見られるのに、総死亡率に差がないのは何故か」との質問もあった。Furberg氏は「追跡期間の問題ではないか」と述べたが、断言は避けた。さらに、「単剤だけで血圧コントロールされた例だけの比較を出すべきではないか」との指摘には、「それでは背景因子にばらつきが生じてしまうので、意味がないと考える」と述べた。(宇津貴史、医学レポーター)

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.12.18 「利尿薬はACE阻害薬、Ca拮抗薬に勝る」−−NHLBIが「ALLHAT」研究結果を発表

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