2003.05.16

【再掲】【日本アレルギー学会春季臨床大会速報】 肺は血流側からの探索によって切り開かれるべき病態を抱えている−−会長講演より

 肺胞側からの探索・研究が主流だった肺は、血流側からの探索によって切り開かれるべき病態を抱えている−−。今大会の会長を務める猪熊茂子氏(写真)は5月13日、会長講演をこの言葉で締め括った。テーマは「血流側の異常による膠原病の肺障害」。

 東京都立駒込病院アレルギー膠原病科に務める猪熊氏はまず、「血流側からの探索の必要性を気付かせてくれた」という当時17歳だった全身性エリテマトーデス(レイノー現象を有する)の症例を提示した。これまでの豊富な臨床経験の中で、猪熊氏らの臨床チームは、画像所見が乏しく、肺容量もHb値も正常でありながら、拡散能のみが低下している症例に「しばしば遭遇」していた。この事実に目を向けさせてくれたのが17歳の症例だった。「換気は何ら問題がないのに拡散に障害がある。これは当時の教科書にも書いていなかった」(猪熊氏)。

 膠原病でのこうした拡散能単独低下例(DLco単独低下例)では、「肺胞領域での換気に対して、血流の相対的な減少が考えられる」との仮説の下、猪熊氏らは次に、肺末梢の血流低下を画像として描出する方法の開発に至る。RIを使った換気・血流シンチグラフで、これによって、換気血流比(V/Q)が高い領域、つまり血流の乏しい領域の描出が可能になった(注)。

 機能面での指標となるDLco単独低下と、画像として描出できる換気血流比(V/Q)シンチの所見に基づき、肺末梢血管の血流障害が疑われる症例を調べたところ、こうした症例では、レイノー症状など四肢末端で観察できるものも含め、攣縮、内膜肥厚、血栓、血管炎、高ガンマグロブリン血症など、血管および血流の障害を持つ症例が目立ったという。

 猪熊氏らの血流側からのアプローチは、「肺末梢血流障害の持続が肺高血圧症を招来する」との予測を支持し、肺高血圧症例では換気血流比(V/Q)シンチ所見が肺末梢で高いという事実を確認するに至った。同時に、肺高血圧症例では、右心室から肺末梢まで到達する時間が長く、肺末梢を通過する時間も長いという結果も得たのだった。

 これらの事実を踏まえて、猪熊氏らは、肺末梢の血流障害を早期に発見しその症例ごとにきめこまかな治療を行うことで、膠原病合併肺高血圧症の治療で実績を挙げたことを強調した。これまでに治療した20数例中、半数以上で改善がみられ、緩解も3例あったという。

 猪熊氏はこのほか、膠原病合併の間質性肺炎や薬剤性肺障害などの症例でも、血管側からのアプローチが効を奏している事実も紹介した。(三和護)

(注)(V/Q)のV、Qは、表記上、頭にドットがつきます。

■ 訂正 ■
 4段落目に「レイノー症状など四肢末端で観察できるものも含め、痙攣」とあるのは「レイノー症状など四肢末端で観察できるものも含め、攣縮」の間違いでした。また、「DLco単独低下」の「L」が小文字となっておりました。正しくは大文字です。お詫びして訂正します。

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