2003.05.16

鼠径ヘルニアの術式比較試験で長期成績が発表、開腹術より腹腔鏡手術で合併症が少ないことが判明

 鼠径ヘルニア患者400人を対象に、開腹術と腹腔鏡手術とを比較した英国の無作為化試験で、施術から5年後の合併症を評価した長期成績が発表された。対側ヘルニア発症や挿入したメッシュの感染などの頻度は変わらなかったものの、知覚麻痺や鼠径部の痛みは腹腔鏡手術群で有意に少なかったという。研究結果は、British Medical Journal(BMJ)誌5月10日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、英国王立Free大学外科のM. Douek氏ら。鼠径ヘルニア患者407人を無作為に2群に割り付け、開腹する「Lichtenstein法」または腹腔鏡下で行う「TAPP法」(transabdominal preperitoneal)でヘルニアを修復した。5年後に生存していた374人のうち、Lichtenstein法で治療した120人と、TEPP法で治療した122人を診察し、合併症を評価した。平均追跡期間は5.8年。

 その結果、開腹手術を受けた患者では、腹腔鏡手術を受けた患者より、不可逆的な知覚麻痺や鼠径部の痛みが有意に多いことが判明。開腹手術で知覚麻痺を生じた27人中12人(44%)は重度〜中等度だったが、腹腔鏡手術では知覚麻痺を生じた3人の重症度は全て軽度だった。労作時や安静時の痛みも、重度のものは開腹手術群にのみ生じていた。一方、メッシュの感染や対側ヘルニアの発生率などに有意差はなかった。

 この試験では、術式の比較という性質上、評価の盲検性は保たれていない。そのため、痛みや知覚麻痺の重症度などの“自覚症状”に、多少心理的な評価が加わっている可能性はある。とはいえ、患者が“自覚する”合併症が少ないという点は、少なくとも手術を受ける側にとって、その術式を選択する大きな動機となるだろう。

 なお、鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術では、今回比較の対象となった「TAPP法」に加え、ここ数年は「TEP法」(transabdominal extraperitoneal)も広く行われるようになってきている。研究グループは、TAPP法とTEP法とを比較した大規模無作為試験の長期成績が出るまでは、施設が得意とする方法で腹腔鏡手術を行えばよいのではないかと考察している。

 この論文のタイトルは、「Prospective randomised controlled trial of laparoscopic versus open inguinal hernia mesh repair: five year follow up」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。(内山郁子)

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