2003.05.15

米JNCが高血圧ガイドラインを改訂、血圧120〜139/80〜89mmHgを「高血圧前症」に

 米国国立衛生研究所(NIH)の下部機関、米国心臓肺血液研究所(NHLBI)は5月14日、高血圧の新しい診療ガイドラインを発表した。このガイドラインは「高血圧の予防、発見、診断、治療に関する米国合同委員会第7次報告(JNC7)」と呼ばれるもので、1997年に発表されたJNC6の改訂版。JNC6で「正常」「正常高値」としていた血圧値を「高血圧前症」(prehypertension)と位置付けたほか、高血圧薬物治療の第一選択薬を利尿薬とし、ステージ2以上は最初から2剤併用を基本とした。

 JNC7報告の速報版(express report)はJournal of the American Medical Association(JAMA)誌5月21日号に掲載予定で、米国高血圧学会(ASH)の開催に合わせ、5月14日からJAMA誌ホームページ上で公開された。JNC7の全報告文(full report)は、米国心臓協会(AHA)の学術誌であるHypertension誌に今夏にも掲載される予定。わが国の高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会の「JSH2000」)は、JNC6や、世界保健機関/国際高血圧学会(WHO/ISH)の高血圧ガイドラインに沿う形で作成されており、JNCガイドラインの改訂は日本のガイドラインにも影響を与えそうだ。

 JNC6と比べた場合の大きな改訂点は、JNC6で「正常血圧」(normal;収縮期130未満かつ拡張期85未満)、「正常高値血圧」(high-normal;収縮期130〜139mmHgまたは拡張期85〜89mmHg)としていた血圧範囲を、併せて「高血圧前症」(prehypertension;収縮期120〜139mmHgまたは拡張期80〜89mmHg)と新たに定義し、管理の対象としたこと。糖尿病や慢性腎疾患を合併していない場合、高血圧前症の患者に薬物療法は不要だが、生活指導はこの段階から行うべきとした。高血圧前症は米国人の22%を占め、4500万人が新たにこのカテゴリーに含まれることになるという。

 一方、JNC6で「至適血圧」(optimal)としていた血圧値(収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満)は、JNC7で「正常血圧」(normal)と定義。ステージ1、2、3(JSH2000の軽症、中等症、重症に相当)の3段階で定義していた「高血圧」については、ステージ1(収縮期140〜159mmHgまたは拡張期90〜99mmHg)は従来通りだが、JNC6のステージ2とステージ3は、両者を併せて新たにステージ2(収縮期160mmHg以上または拡張期100mmHg以上)と定義し直した。

薬物治療の第一選択は利尿薬、ステージ2は2剤併用療法で

 また、特に合併症のない高血圧患者に対し、薬物療法の第一選択薬を「利尿薬またはβ遮断薬」の2剤から「利尿薬」(サイアザイド系)1剤へと変更した点も大きな改訂点。さらに、ステージ2の高血圧患者に対しては、最初から利尿薬+他薬の2剤併用療法で治療を開始するよう推奨した。降圧目標値は、通常は140/90mmHg未満、糖尿病や慢性腎疾患合併者は130/80mmHg未満とした。

 合併症がある高血圧患者については、次に挙げる薬剤を選択するよう推奨している:
1.心不全−利尿薬、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬、アルドステロン拮抗薬
2.心筋梗塞の既往−β遮断薬、ACE阻害薬、アルドステロン拮抗薬
3.冠動脈疾患のハイリスク者−利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、カルシウム(Ca)拮抗薬
4.糖尿病−利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、A2受容体拮抗薬、Ca拮抗薬
5.慢性腎不全−ACE阻害薬、A2受容体拮抗薬
6.脳卒中再発予防−利尿薬、ACE阻害薬

 このガイドラインのタイトルは、「The Seventh Report of the Joint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure」。現在、こちらで全文を閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。この件に関するNHLBIのニュース・リリースは、こちらまで。ガイドライン及び関連情報は、NHLBIホームページのこちらからも入手できる。(内山郁子)

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