2003.05.11

【日本内分泌学会速報】 「DHEAは長寿ホルモン」、代謝改善・抗アポトーシスなど様々な生理作用−−会長講演より

 デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、健康で明るい長寿社会を作るために必要なホルモンである−−。5月10日の会長講演「生活習慣病とデヒドロエピアンドロステロン−ヒトにおける副腎アンドロジェンの役割は何か−」では、今期総会の会長を務める、横浜市立大学第三内科教授で医学部長の関原久彦氏が登壇。サプリメントとしても人気が高いDHEAの様々な生理作用を、臨床データも交えて解説し、聴衆に分子レベルでの作用機序解明を呼びかけた。

 DHEAは、コルチゾールなど他のステロイドホルモンと同様、主に副腎皮質で産生され、男性ホルモン(アンドロステンジオン)や女性ホルモン(エストラジオール)に変換される。他のステロイドホルモンとの違いは、血中濃度が加齢により変動すること。血中濃度は10歳代後半から20歳代にかけてピークに達し、その後加齢に伴い低下していく。このことから、DHEAが老化や、老化と深く関連している生活習慣病の発症抑制に関与する可能性が議論されるようになった(関連トピックス参照)。

 関原氏らは、過食による肥満で糖尿病を発症するレプチン受容体欠損マウス(db/dbマウス)を用いた実験で、DHEAを食べさせると、インスリンやトログリタゾンを投与した場合と同程度にまで血糖値が下がることを確認(Diabetes;48,1579,1998)。分子レベルでの解析で、DHEAが、肝臓の糖新生系酵素(G6Pase、FBPase)の発現量を下げることで肝臓からの糖放出を抑制、血糖値を下げると同時にインスリン抵抗性を改善していることを見出した。

男性20人対象のパイロット試験でDHEAの抗糖尿病作用が明らかに

 そこで関原氏らは、27〜62歳の健康な男性20人を対象としたパイロット試験を実施。DHEA1日25mgを2週間服用し、服用前後で血中DHEA値やインスリン値、インスリン抵抗性指数(HOMA-R)、血清脂質値などがどのように変わるかを調べた。

 その結果、DHEA、DHEAS(DHEA硫酸塩。血中ではDHEAとDHEASが共存する)のいずれも、服用前は加齢に伴う低下が認められたのに対し、服用後は血中濃度の年齢依存性がみられなくなることが判明。DHEAから作られる男性ホルモン、女性ホルモンも同様に、服用後は加齢に伴う低下がみられなくなった。このことは、中高年者でもDHEAを服用すれば、DHEAや男性ホルモン、女性ホルモン値が若年者並みに上昇することを示している。

 DHEA値とインスリン値、HOMA-R値は逆相関の関連があったが、40歳以上でHOMA-R値が高い8人では、DHEA服用後に6人でHOMA-R値が下がり、インスリン抵抗性の改善が認められた。血清脂質では、総コレステロール値は血中DHEA値との相関は認められなかったが、トリグリセリド(TG)値はDHEA値と逆相関を示し、DHEAの服用で低下することがわかった。

 以上から関原氏は「DHEAの補充療法には、インスリン抵抗性を改善し、TG値を下げる、つまり代謝異常症候群(metabolic syndrome)を改善する可能性がある」と総括した。

DHEAに抗炎症、抗アポトーシス作用も

 さらに、レプチンや接着因子の可溶性ICAM-1、炎症性マーカーのC反応性蛋白(CRP)も血中DHEA値と逆相関し、これらの因子が「お互いに関連を保ちながら変動する」(関原氏)ことも判明。肝炎モデルラットやヒト末梢血リンパ球を使った実験で、DHEA投与により細胞のアポトーシスが抑制されることもわかったという。

 次の課題は、DHEAによる代謝改善作用や抗アポトーシス作用、抗炎症作用など一連の生理作用が、どのようなメカニズムで発揮されるのかを究明すること。関原氏は最後に、昨年Science誌に掲載された興味深い研究結果を紹介した(Science;297,811,2002)。これは、長寿の人では体温が低く、血中インスリン濃度が低く、血中DHEA濃度が高いとの現象がみられることを示した研究。面白いのは、“カロリー制限下で飼育したサル”でも、通常飼育のサルより体温、インスリン濃度が低く、DHEA濃度が高いことが示された点で、少食健康法の傍証にもなるデータだ。

 このデータを踏まえ、関原氏は「DHEAは長寿ホルモンと考えられる」と述べ、生理作用の機序が「若い先生方の今後の研究で解明されることを期待したい」とまとめた。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.4.10 「若返りホルモン」DHEAにアルツハイマー病の進行抑制効果実証されず−−初のプラセボ対照二重盲検試験結果が発表

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