2003.05.07

心拍数やHRVが2型糖尿病の発症予測因子に−−「ARIC」研究より

 健康な中高年男女8000人を8年間追跡した米国の研究で、心拍数が高い、あるいは心拍変動性(HRV)が低い人では、年齢や性別、体格指数(BMI)などで補正後も、2型糖尿病の発症率が有意に高いことがわかった。心拍数など自律神経系の指標と、糖尿病発症との相関が、健常人で示唆されたのは初めて。研究結果は、Circulation誌5月6日号に掲載された。

 この研究は、動脈硬化性疾患の危険因子を評価する米国の地域コホート研究「ARIC」(Atherosclerosis Risk In Communities)の一環として行われたもの。「ARIC」研究の対象は米国4地区に住む、45〜64歳の男女1万5792人だが、今回は研究参加時に糖尿病ではなく、HRVなど必要なデータが揃っていた8185人を解析対象とした。心拍数やHRVは、20分間の安静後に仰臥位で心電図を2分間測定して算出した。

 解析対象者の研究参加時の平均年齢は54歳で、6割弱が女性、約2割が黒人。60%に飲酒習慣、21%に喫煙習慣があった。平均BMIは27.1と肥満気味で、約3割が高血圧を合併していた。空腹時血糖の平均値は5.5mmol/l(99mg/dl)。心拍数の平均値は66.0回/分、HRVの低周波(LF)成分(0.15〜0.40Hz)のパワーの平均値は17.8ms2だった。

 平均8.3年間の追跡期間中、1063人(13%)が2型糖尿病を発症。2型糖尿病の発症者では、非発症者よりもHRVのLF成分のパワーが低く、心拍数が高いことがわかった。そこで研究グループは、対象者を心拍数の多寡で4群に分類。年齢や人種、性別、飲酒・喫煙習慣、冠動脈疾患の既往、運動習慣とBMIで補正した後、最も心拍数が高い群(72.7回/分を超える)と最も心拍数が低い群(60.1回/分以下)とで、2型糖尿病の発症率を比較した。

 その結果、心拍数が最も高い群では、最も低い群よりも1.6倍、2型糖尿病を発症しやすいとの計算になることが判明した(95%信頼区間:1.33〜1.92)。HRVのLF成分も同様に、最も低い群(7.7ms2未満)は最も高い群(38.9ms2以上)よりも、糖尿病を1.2倍発症しやすかった(同:1.0〜1.4)。

 心拍数やHRVは自律神経系の働きを反映すると考えられており、複数の疫学研究で心疾患の発症やインスリン抵抗性などとの関連が示唆されていたが、2型糖尿病の発症との関連が示されたのは初めて。高い心拍数、あるいは心拍の“ゆらぎ”が少ないことが糖代謝異常の結果として生じるのか、または原因となるのかは今後の検討待ちだが、外来で簡便に測定できる心拍数は、2型糖尿病発症ハイリスク者の健康管理に役立つ指標となりそうだ。

 この論文のタイトルは、「Prospective Investigation of Autonomic Nervous System Function and the Development of Type 2 Diabetes」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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