2003.05.02

【SARS速報】 香港から小児と成人の臨床経過が報告、論文がLancet誌に

 5月1日午後1時現在で急性重症呼吸器症候群(SARS)の累積患者数が1600人、死者が162人となった香港から、小児及び成人のSARS患者の詳しい臨床経過が報告された。論文はLancet誌に掲載予定で、小児の臨床経過に関する論文はLancetホームページ上で早期公開、成人に関する論文(次週のLancet誌に掲載予定)は世界保健機関(WHO)ホームページ上でアブストラクトが公開された。

小児は成人より軽症、他者への感染力も弱い可能性

 小児患者に関しては、香港Prince of Wales病院とPrincess Margaret病院に入院した最初の10人について、年齢、性別や入院時症状、血液検査、胸部X線像、治療内容などが紹介。全員が成人の感染者と接触しており、持続性の熱、咳、胸部X線像の進行性変化とリンパ球減少症がすべての患者に認められた。

 患者を10歳以下(5人)と11〜16歳(5人)に分けると、後者(ティーンエージャー)は前者より重症で、5人中4人で酸素吸入、うち二人では人工呼吸装置の装着が必要になった。ティーンエージャーでは倦怠感や筋肉痛、寒気、体のこわばりなど、成人に類似した症状がみられた。治療は原則として、抗ウイルス薬のリバビリンとステロイドとの併用療法が行われたが(関連トピックス参照)、短期的には副作用は認められなかったという。

 10人中8人は発症時に学校に登校していたが、クラスメートへの二次感染は1例も生じなかった。また、論文投稿時点で約30人の小児にSARS感染が疑われていたが、死亡した子供はいなかった。以上から研究グループは「予備的な結果ではあるが、若年の小児ではティーンエージャーや成人より病状が軽く、臨床経過も穏やか」とまとめている。

成人ではリバビリン・ステロイド併用後に症状が再燃、2割はARDSへと進展

 一方の成人例は、香港で3週間、抗ウイルス薬のリバビリンとステロイドとの併用療法を行った75人に関するもの。熱や肺炎は初期治療に反応するものの、7〜9割の患者で再燃することがわかった。治療開始から再燃までの平均期間は、熱が8.9日、水様下痢が7.5日、胸部X線上の肺炎再燃が7.4日、呼吸器症状が8.6日だった。

 また、20%の患者は第3週に急性呼吸促迫症候群(ARDS)へと病状が進展した。ARDS合併の危険因子は、「年齢」と「B型肝炎ウイルス(HBV)への持続感染」だった。

 さらに、75人中14人(うち4人がARDSを合併)から採取した検体(鼻咽頭分泌物、糞便、尿)については、RT-PCRを使ったウイルス量の定量解析が行われた。ウイルス量は10日目にピークに達し、15日目には入院時のレベルにまで下がった。このことから研究グループは、第2週以降の症状再燃は、ウイルスの増殖によるものではなく、免疫病理学的な機序によると考察した。

 なお、RT-PCR検査によるSARS患者20人のウイルス検出率(発症10〜21日後)は、鼻咽頭分泌物と糞便で100%近い半面、尿では50%以下だった。使用プライマーはWHOホームページに掲載されたアブストラクトには書かれていない。研究グループは、鼻咽頭分泌物や糞便を検体とするRT-PCR検査と、セロコンバージョン(ウイルス抗原がなくなり抗体が出てくること)の確認が、SARSの確定診断に有用だと提言している。

 小児症例に関する論文のタイトルは、「Clinical presentations and outcome of severe acute respiratory syndrome in children」。現在、全文をこちら(PDF形式)で閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。成人に関する論文のタイトルは、「Prospective study of the clinical progression and viral load of SARS associated coronavirus pneumonia in a community outbreak」。アブストラクトは、WHOホームページのこちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.4.21 SARS速報】「リバビリンの推奨投与法」が論文化、カナダ医師会雑誌がオンライン公開

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