2003.04.30

【日本小児科学会速報】 国立成育医療センター総長の松尾宣武氏が小児医療施設の絞り込みを提唱

 国立成育医療センター総長の松尾宣武氏(写真)は、「21世紀の小児医療:小児科医の新しいリアリズムをめざして」と題した日本小児科学会の基調講演のなかで、病院小児科に過度に依存した小児救急医療体制や小児科研修体制の貧弱さを指摘。国際水準の医療を提供するためには、1.統計データに基づく小児医療政策、2.小児診療や小児科教育を実施する病院施設の絞り込み、3.精神保健を含む研修プログラムの充実などの必要性を訴えた。

 近年、小児科を志望する医師の急減などを背景に、小児医療の充実が叫ばれるようになったが、小児保健・医療の方向性を描くために欠かせない基礎的なデータが存在しないと松尾氏は指摘する。例えば全医療費に占める小児医療費の比率、小児病床数、小児科医の実数などの統計データがない。「こうしたデータを整備することなしに小児科医数の過不足を議論するのは時間の無駄」(松尾氏)として、根拠に基づいた改革案作成の重要性を強調した。

 松尾氏はさらに、日本の小児科教育と診療体制が国際水準に達していない部分があることを認め、「国民に対して世界の先進国と同じ水準の医療を提供するのがわれわれの使命である」と改善に向けての努力を要請した。

 例えば、国内では最先端に位置する国立成育医療センターとカナダのトロント小児病院を比べると、病床数は国立成育医療センターが500床、トロント小児病院が372床とほぼ同一水準だが、トロント小児病院の病院職員数は成育医療センターの4.5倍、医師数は5倍、研究者数は30倍もの格差があるという。

 研修体制も同様で、日本では500〜600と米国の2.5倍もの小児科研修施設があるが、1施設当たりの指導医数は日本の「3人以上」に対して米国では70人と大差がつく。さらに、小児精神保健研修プログラムを持っている施設は、米国の120カ所に対して、日本は皆無だという。

 一方、最近必要性が叫ばれている小児救急医療は、「ほとんどは時間外医療に対する需要」であり、こうした「いわゆる救急医療」は一般開業医と地域医療を担っている小児科医が行うべき医療範囲で、現在のようにすべて病院小児科が担うのは不可能という。

 松尾氏は、「小児医療と研修体制を国際的な水準に近づけるためには施設の絞り込みが不可欠。これによって地域の小児医療は(一時的には)マイナスの影響を受けるが、(貧弱な小児医療の)現状を放置することは許されない」として、小児医療体制の整備の必要性を強調した。(中沢真也)

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