2003.04.24

経済的理由で早期中断の「CONVINCE」試験、原著論文がJAMA誌に掲載

 約1万6000人の高血圧患者を対象に5年間の追跡予定で開始され、スポンサー企業の経済的な理由により2年早く中断された「CONVINCE」(Controlled Onset Verapamil Investigation of Cardiovascular Endpoints)試験の原著論文が、Journal of American Medical Association(JAMA)誌4月23/30日号に掲載された。1次評価項目到達率に有意差はなかったものの、検出力不足から、カルシウム拮抗薬と対照薬(β遮断薬、利尿薬)との“同等性”は示されなかった。

 「CONVINCE」試験は、中高年の高血圧患者を対象に、カルシウム拮抗薬の塩酸ベラパミル徐放錠(わが国での商品名:ワソランなど。ただし、わが国では徐放錠は発売されておらず、錠剤・注射薬に高血圧の適応はない)、または対照薬(β遮断薬のアテノロールまたはサイアザイド系利尿薬)を投与。心血管イベントの抑制効果を比較した多施設無作為化二重盲検試験だ。

 ベラパミル徐放錠は就寝前に服用すると、午前中に最大血中濃度に達するよう設計されており、「心血管イベントが多発する時刻に効く」との期待があった。また、カルシウム拮抗薬と、β遮断薬・利尿薬とを直接比較する試験としても注目されていた。

 解析対象患者は総計1万6476人で、8179人がベラパミル徐放錠群、8297人がβ遮断薬・利尿薬群に割り付けられた。平均年齢は66歳、56%が女性で、84%が白人。半数は高血圧以外の心血管危険因子(肥満、糖尿病、喫煙など)を二つ以上持っていた。84%は降圧薬治療を受けており、うち半数強が利尿薬を服用していた。試験開始時の血圧は平均で150.1/86.8mmHg。中断時までの追跡期間の中央値は3年だった。

 1次評価項目は心血管イベント(心筋梗塞+脳卒中+心血管疾患死)で、追跡期間中に729人が発症したが、対照群に対するベラパミル徐放錠群のハザード比は1.02(95%信頼区間:0.88〜1.18)となり両群に有意差は認められなかった。ただし、両群が「同等」とするためには、95%信頼区間の上限が1.16以下でなければならず、統計学的には両群の“同等性”は示されなかった。

 2次評価項目で有意差がみられたのは、「心不全」(ハザード比:1.30)と「出血(脳内出血は除く)による死亡・入院」(同:1.54)で、いずれもベラパミル徐放錠群で多かった。1次評価項目の発生時間別解析(群間の有意差なし)では、両群とも午前6時から正午までの発生数が最も多く、ベラパミル徐放錠に期待された「午前中のイベント抑制効果」は認められなかった。

 なお、降圧幅はベラパミル徐放錠群が13.6/7.8mmHg、対照薬群が13.5/7.1mmHgだった。前者の65.5%、後者の65.9%で、収縮期血圧が140mmHg未満に保たれていた。

再編下にあったスポンサー企業、問われる社会的責任

 15カ国の661医療機関から、1万6000人もの患者を登録しながら、早期中断による検出力不足で明確な結果を出せなかった−−。原著論文に対する論説(editorial)では、「こうした経済的理由による早期中断はめずらしくない」と、複数の具体例を提示。その上で、スポンサー企業の社会的責任について論じている。

 論説によると、試験中止は純粋に経済的な理由で、中止が決定された時点で二重盲検性は保たれていた。研究グループに対して提示された中止理由は「経営戦略を考慮した(business consideration)」というもので、それ以上の説明はなかったという。

 「CONVINCE」試験のスポンサー企業は1社のみ(シングル・スポンサー)で、企業再編に伴い、Searle社からMonsanto社またはPharmacia社(地域により異なる)へと変わった。論説は、製薬企業の統合・再編が進む中、今後もこうした事態は起こり得るが、これは科学的・倫理的観点からみて重大な問題だとする。

 科学的な観点からは、仮にこの試験が予定通り遂行された場合、心血管イベント発生率は有意な差を持ってβ遮断薬、ベラパミル徐放錠、利尿薬の順になった蓋然性が高い。つまり、「利尿薬とβ遮断薬は同等ではない」(利尿薬がβ遮断薬に勝る)ことを示す初めての試験となった可能性があったという。

 また、倫理的な問題点の一つとして、論説は試験参加者の6割で良好な血圧コントロールが得られていた点を挙げる。一般に、血圧管理状態が良好な高血圧患者は3〜4割程度と見積もられており、試験参加者は臨床試験に参加することで「健康上の利益」を得ていた。つまり、試験の早期中断によって得られるべき利益を失ったとみなせるとし、ヘルシンキ宣言が最も尊重すべきとする「参加者の健康上の利益」を損なうという。

 たとえ企業主導のものであっても、医学研究には「社会的な責務と倫理的な責任が伴う。これは、四半期ごとの経営戦略の変更や経営最高責任者(CEO)の交代(などの事情)を超越したものだ」と論説は明記する。スポンサーに対する「理にかなった批判」が、原著論文と共に、堂々と医師会雑誌に掲載される−−。このような姿勢は、医学・科学の独立性を保つ上で見習うべき点ではないだろうか。

 この論文のタイトルは、「Principal Results of the Controlled Onset Verapamil Investigation of Cardiovascular End Points (CONVINCE) Trial」。アブストラクトは、こちらまで。(内山郁子)

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