2003.04.23

尿酸値が心不全の強力な予後マーカーに

 尿酸値が565μmol/l(9.50mg/dl)以上の慢性心不全(CHF)患者では、尿酸値がそれ未満の人よりも、1年死亡率がおよそ7倍になることが明らかになった。年齢や最大酸素摂取量(ピークVO2)、左室駆出力(LVEF)、腎機能など既知の予後因子とは独立した強力な予後因子であることもわかり、「CHF患者の予後に影響を与える代謝因子として、安価かつ容易に検査できる尿酸値を重視すべき」と研究グループは提言している。研究結果は、Circulation誌4月22日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、ドイツVirchow大学附属病院(Klinikum)循環器部門のStefan D. Anker氏ら。まず112人のCHF患者(検討群)で生命予後と尿酸値との関連を前向きに調べ、「予後不良」を示すカットオフ値を算出。このカットオフ値を別のCHF患者(検証群)182人に当てはめて、尿酸値の予後マーカーとしての精度を検証した。

 検討群の平均年齢は59歳、女性比率は10%で、60%が虚血性。ピークVO2は平均17.1ml/kg/分、LVEFは平均26%で、NYHA心機能分類は平均2.7だった。一方の検証群は、平均年齢が63歳、LVEFの平均値が32%と、より高齢で心機能が比較的良かったが、他の因子に有意差はなかった。尿酸値は検討群が平均503μmol/l(8.5mg/dl)、検証群が平均466μmol/l(7.8mg/dl)。

 検討群を平均51カ月追跡したところ、69人が亡くなり、1年死亡率は24%となった。死亡者の平均尿酸値は544μmol/l(9.1mg/dl)で、生存者の438μmol/l(7.4mg/dl)より有意に高いことが判明。予後不良を最も良く反映するカットオフ値は565μmol/l(9.50mg/dl)と算出された。

 次に研究グループは、このカットオフ値を検証群に当てはめ、生命予後がどの程度予測できるかを評価した。検証群の1年死亡率は15%と、検討群よりも低かったが、尿酸値が565μmol/l(9.50mg/dl)以上の人の1年死亡リスクは7.14倍(95%信頼区間:4.20〜12.15)となり、尿酸値を予後マーカーとして使えることが確認できた。多変量解析からは、尿酸値、LVEFとピークVO2が独立の予後因子として浮上したが、予後予測能は尿酸値が最も高かった。

「MFHスコア」で予後の層別化も

 さらに、今回得られた研究結果に基づき、研究グループはCHF患者の予後判定指標として新たに「MFHスコア」を提唱した。これは、代謝因子(M;metabolic factor)と運動耐容能(F;functional status)、血行動態因子(H;hemodynamic factor)を三つの危険因子とし、危険因子の数(0〜3の4段階)で予測予後を判定するものだ。

 Mとして高尿酸値(565μmol/l以上)、Fとして低ピークVO2値(14ml/kg/分未満)、Hとして低LVEF値(25%以下)を採用すると、CHF患者212人を対象とした検討から、3年生存率がきれいに層別化されることがわかった(スコア0:91%、スコア1:67%、スコア2:33%、スコア3:12.5%)。

 CHF患者の予後予測は、治療方針を決める上で欠かせないもの。より大人数・多施設での検証が待たれるが、今回提唱された、尿酸値を危険因子の一つとして用いる「MFHスコア」には、今後大きな注目が集まりそうだ。

 また、尿酸値を低下させる介入が、CHF患者の予後に影響を及ぼすか否かも興味深いところ。今年3月から、CHF患者400人を対象に、抗尿酸血症薬のオキシプリノール(アロプリノールの主代謝物として知られる)を用いたプラセボ対照第2/3相試験「OPT-CHF」が始まっており、結果次第では新たな治療戦略にもつながりそうだ。

 この論文のタイトルは、「Uric Acid and Survival in Chronic Heart Failure」。アブストラクトは、こちらまで。オキシプリノールの第2/3相試験については、カナダCardiome Pharma社のプレス・リリースまで。(内山郁子)

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.3.30 再掲】心不全患者の突然死、糖尿病と低EF、LVD拡大が危険因子に−−CHART研究より

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