2003.04.21

【SARS速報】 香港のSARSマンション集団感染、下水から浴室へのエア逆流が主因か

 4月20日午後1時現在で急性重症呼吸器症候群(SARS)の累積患者数が1380人、死者が88人に達した香港で、患者総数の4分の1を占めるマンション集団感染事例の詳細な解析結果が発表された。香港衛生省は、感染拡大の主因は下水溝内の空気が浴室に逆流し、ウイルス粒子が撒き散らされたためと推定した。

 さらに、このマンション以外のSARS患者居住建物の管理者に対しても、1.他の居住者にSARS患者が同じ建物に住んでいたことを伝える、2.建物を滅菌する−−の2点を行うよう通知。併せて、SARS患者居住建物の実名をホームページ上に公開、居住者に注意を促した。

 香港最大の集団感染事例となった現場は、九龍地区の大規模マンション群「アモイガーデン」(関連トピックス参照)。4月15日までに321人のSARS患者が発生している。香港衛生省など8省庁の合同調査団の調べで、1.発端者は33歳男性、2.患者の41%は全15棟のうちE棟に集中しており、発症のピークも他棟より3日早い、3.E棟の八つあるユニットのうち二つで高い感染率(感染の縦方向への拡大)、4.上層階の方が下層階より感染率が高い−−との特徴が明らかになった。

 建物内の検査から、洗面所や台所などの排水パイプには全て、下水などの逆流を防ぐU字トラップが設置されていることが判明。しかし、多くの家庭では浴室の床掃除はモップ拭きのみで、浴室の床に水を流さないためU字トラップは乾燥していたことがわかった。U字トラップが乾燥している場合、浴室のドアを閉めて換気扇を回すと、下水溝内の空気がウイルス粒子を含んだまま浴室に逆流し得ることも確かめられた。

 このほか、下水管の換気パイプの亀裂(いわゆる“煙突効果”で微粒子状の下水が上層階にまで到達し得る)も確認。マンション内のネズミの糞やゴキブリの体からもSARSウイルスが検出されたが、合同調査団は「感染拡大のパターンを考慮すると、ウイルス粒子を含む微粒子状の下水が、浴室内に逆流したことが主因」と結論付けている。

 なお、アモイガーデンにおけるSARS集団感染患者の特徴は、下痢の合併者が極めて多いこと。発端者を含め3分の2が下痢を合併しており、特にE棟の下水からは多量のSARSウイルスが検出されている。糞便中ではウイルスが他の環境中よりも長く活性状態を保てると報告されており、この点も集団感染の遷延化に寄与した可能性があるようだ。

 この調査報告書のタイトルは、「Main Findings of an Investigation into the Outbreak of Severe Acute Respiratory Syndrome at Amoy Gardens」。現在、全文をこちら(PDF形式)で閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。香港のSARS患者数の最新情報はこちら、SARS患者が居住していた建物のリストはこちらまで。(内山郁子)

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.4.11 SARS速報】香港のマンション集団感染、閉鎖前に116家族が脱出していた

■ SARSダイレクト ■
◆ 2003.4.18 緊急情報】 重症急性呼吸器疾患(SARS)ダイレクト
感染症情報センター、疑い例、可能性例、およびその接触者の管理例を掲載、ほか

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