2003.04.18

【日本産科婦人科学会速報】 高血圧を合併しない妊娠中毒症、周産期予後は正常妊婦と変わらず

 慶応大学産科の松本直氏らの調査で、妊娠中毒症の3症状のうち「高血圧」を合併していない妊婦では、出生児体重や妊娠糖尿病の合併率などの周産期予後は正常妊婦と変わらないことがわかった。注意深い管理が必要なのは高血圧合併者だけという結果で、「わが国の妊娠中毒症の診断基準には見直しが必要」と松本氏らは指摘している。研究結果は、4月14日のポスターセッションで報告された。

 妊娠中毒症の診断基準は欧米と日本とで異なっており、欧米では高血圧を重視するのに対し、わが国では1.高血圧、2.浮腫、3.蛋白尿−−の3症状のうち二つがある場合に「妊娠中毒症」と診断される。つまり、高血圧を合併していなくても、浮腫と蛋白尿の二つがあれば、妊娠中毒症との診断の下に厳格な管理が行われている。

 松本氏らは、同大附属病院産科で出産した2651人を、1.妊娠中毒症なし(正常妊婦、2011人)、2.高血圧を伴う妊娠中毒症(123人)、3.高血圧を伴わない妊娠中毒症(517人)−−の3群に分類。欧米で重視される「高血圧」がない妊娠中毒症患者でも、正常妊婦より妊娠・出産に伴うリスクが高いかを検討した。大学病院の受診者であることを反映してか、検討対象となった妊婦の平均年齢は33歳、妊娠前の体格指数(BMI)は平均20。一般の妊婦よりも高齢でやせている傾向があった。

 その結果、出生児の身長・体重が週齢からの予想サイズより大幅に小さいSFD(small for date)児の出産率が、高血圧を伴う妊娠中毒症で有意に多いことが判明。妊娠糖尿病の合併率も、高血圧がある妊娠中毒症妊婦では、正常妊婦より有意に多かった。一方、同じ妊娠中毒症でも、高血圧を合併していない場合は、SFD児の出産率や妊娠中毒症の合併率は正常妊婦と変わらなかった。

 以上から松本氏らは「高血圧を伴わず、浮腫や蛋白尿のみの妊娠中毒症では、母児の予後は正常妊婦と変わらない」と結論。欧米に準じて、高血圧を主症状とする形で妊娠中毒症の診断基準を見直すべきとした。

 なお、妊娠中毒症の診断基準に関しては、日本産科婦人科学会の関連学会である日本妊娠中毒症学会で、現在見直しを進めているところ。発表後の質疑応答では、見直し案を検討している日本大学産婦人科の佐藤和雄氏が「妊娠中毒症の主体は高血圧であるという点ではコンセンサスが得られている。診断基準から浮腫は除く方向だが、蛋白尿に関しては議論中。夏にはある程度まとまった形になる予定だ」とコメントした。(内山郁子)

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