2003.04.04

インフルエンザワクチンが心疾患・脳卒中を予防、米の大規模観察研究が示唆

 米国のマネジド・ケア(前払い集団保険方式の民間医療保険)加入高齢者14万人を対象とした調査で、インフルエンザワクチンを受けた人では、インフルエンザや肺炎だけでなく、心疾患や脳血管疾患による入院も少ないことが明らかになった。ワクチン接種者では高血圧や糖尿病、高脂血症などの持病を持つ人の比率が高く、一般に「ハイリスク」とみなされるだけに、今回得られたデータは大きな意味を持ちそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌4月3日号に掲載された。

 調査対象は、米国Health Partners社(加入者総数:65万人)、米国Oxford Health Plan社(同:180万人)、米国Kaiser Permanente Northwest社(同:42万人)の3民間保険会社が提供するマネジド・ケア加入者のうち65歳以上の高齢者。調査は1998〜1999年と1999〜2000年の、2回のインフルエンザシーズンに行われた。対象者数は、第1回調査が14万55人、第2回調査が14万6328人。調査対象者の平均年齢は74歳で、半数強が女性だった。

 第1回調査時には全体の55.5%、第2回には59.7%がインフルエンザワクチンの接種を受けた。ワクチン接種者と非接種者を比較すると、平均年齢は接種者の方がわずかながら有意に高く(第1回:0.5歳、第2回:0.8歳)、女性比率も数%低かった。しかも、高血圧、高脂血症や心疾患、糖尿病・内分泌疾患、癌などの合併比率は、ワクチン接種者でいずれもわずかながら有意に高かった。一方、痴呆・脳卒中の既往は、比率としては少ないものの、ワクチン非接種者で有意に多かった。

 総じて見ればワクチン接種者の方が病気勝ちで、死亡リスクも高いとみなせるわけだが、シーズン中の入院や死亡は、2回の調査とも、ワクチン接種者で有意に少ないことが判明。肺炎・インフルエンザによる入院(相対入院率:2回の調査で順に32%減、29%減)だけでなく、心疾患(同:19%減、19%減)、脳血管疾患(同:16%減、23%減)による入院も有意に少なかった。総死亡は第1回調査シーズンで相対的に48%、第2回で50%、ワクチン接種者で有意に少なかった。

 この研究はあくまで観察研究であり、患者背景にも違いがあるため確定的なことは言えないが、「他のより小規模な観察研究や、小規模なオープンラベルの介入研究でも同様の結果が出ており、今回の結果はそれを支持するもの」と研究グループはみる。比較的健康な人が多いマネジド・ケア加入者の調査とはいえ、14万人で2年連続して同じ結果が出たインパクトは大きく、今後のワクチン接種動向に大きな影響を与えそうだ。

 なお、わが国では2001年11月に予防接種法が改正され、原則として65歳以上の高齢者に対し、インフルエンザワクチンの法定接種(一部公費負担)が行われるようになった。米国では65歳以上の高齢者のおよそ6割がインフルエンザワクチンの接種を受けているが、わが国では、2001年度の高齢者接種率は27.45%(「平成13年度予防接種法に基づく高齢者のインフルエンザワクチン予防接種状況調査報告」)と報告されている。

 この論文のタイトルは、「Influenza Vaccination and Reduction in Hospitalizations for Cardiac Disease and Stroke among the Elderly」。アブストラクトは、こちらまで。

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