2003.04.04

高血圧合併心疾患ハイリスク者、スタチンの投与で心イベントが4割減少−−「ASCOT-LLA」研究より

 心疾患リスクが高いが、総コレステロール値はさほど高くない高血圧患者にスタチン系薬を投与すると、プラセボを投与した場合より心イベントの発症率が相対的に36%低下することがわかった。米国心臓学会(ACC)で4月2日に発表された「ASCOT-LLA」(Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial -- Lipid Lowering Arm)研究の結果で、原著論文が同日付でLancet誌ホームページにオンライン公開された。

 「ASCOT-LLA」研究は、「ASCOT」研究の参加者の一部を対象に行われたプラセボ対照二重盲検試験。「ASCOT」研究は、心疾患の既往はないが、心血管疾患リスクが高い(高血圧以外の危険因子が三つ以上ある)高血圧患者を対象に、2種類の治療戦略をオープンラベル形式で比較するもので、総計1万9342人を対象に現在も進行中だ。「ASCOT-LLA」研究は、このうち総コレステロール値が6.5mmol/l(250mg/dl)未満の1万305人を対象に開始、中間解析で有意差が出たため「ASCOT」研究に先立ち早期中断された。

 「ASCOT-LLA」研究参加者の平均年齢は63歳、2割弱が女性で白人が95%を占める。試験開始時の血圧平均値は164/95mmHg、平均体格指数(BMI)は29、平均総コレステロール値は5.5mmol/l(210mg/dl)。3割強が喫煙者で、4分の1は糖尿病を合併していた。左室肥大、2型糖尿病、喫煙、脳卒中・一過性脳虚血の既往、男性、55歳以上などの「心血管疾患危険因子」保持数は平均3.7個。

 研究グループは対象者を無作為に2群に分け、一方にスタチン系薬のアトルバスタチン(わが国での商品名:リピトール)10mg、他方にプラセボを連日服用してもらい、予後を比較した。1次評価項目は非致死性心筋梗塞(無症候性を含む)+致死性冠動脈疾患。追跡期間の中央値は3.3年。

 なお、両群とも「ASCOT」研究で2種類の降圧薬群のいずれかに割り付けられており、血圧は最終的に138/80mmHg前後と、極めて良くコントロールされていた。総コレステロール値は、アトルバスタチン群(5168人)で当初より1.3mmol/l(50mg/dl)、プラセボ群(5137人)で0.3mmol/l(12mg/dl)低下した。

 その結果、追跡期間中に1次評価項目に到達した人数は、アトルバスタチン群が100人(1.9%)、プラセボ群が154人(3.0%)。両群とも発症率が極めて低く、絶対リスクの差も1.1%とわずかだが、ハザード比は0.64(95%信頼区間:0.50〜0.83)となり、アトルバスタチン群で有意に心イベントの発症が少なくなった。2次評価項目の致死性・非致死性脳卒中、総心血管イベント、総冠動脈イベントもアトルバスタチン群で有意に少なかった。総死亡には有意差はなかった。

 1次評価項目に「無症候性心筋梗塞」(silent MI)を含めるとの試験設計は、この種の試験では珍しい。異常Q波で評価しており、イメージとしては陳旧性心筋梗塞に近いようだ。ただし、発症数はアトルバスタチン群が13人、プラセボ群が17人とわずかで、これを除いた「非致死性心筋梗塞+致死性冠動脈疾患」発生率もアトルバスタチン群で有意に低かった(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.47〜0.81)。

 以上から研究グループは、さほど総コレステロール値が高くない高血圧患者で、心血管リスクが高い場合、血圧コントロールに加えアトルバスタチンを投与すると心血管疾患リスクを大幅に減らせると結論。今回の結果は今後の血清脂質管理ガイドラインに影響を与え得るとしている。

 「ASCOT」研究は英国、アイルランドとスカンジナビア諸国による欧州最大の降圧薬臨床試験で、米国を中心とする「ALLHAT」(Antihypertensive and Lipid-Lowering treatment to prevent Heart Attack Trial)研究と対をなすもの。「ALLHAT」研究が利尿薬(D)とカルシウム拮抗薬(C)、アンジオテンシン変換酵素ACE)阻害薬(A)の3剤を、必要に応じβ遮断薬(B)を併用するとの条件下で比較したのに対し、「ASCOT」研究ではB(±D)とC(±A)とを比較するとの試験設計になっている。最終結果は2004年内にも発表される予定だ。

 この論文のタイトルは、「Prevention of coronary and stroke events with atorvastatin in hypertensive patients who have average or lower-than-average cholesterol concentrations, in the Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial--Lipid Lowering Arm (ASCOT-LLA)」。Lancet誌の購読者は、こちらから無料でダウンロードできる。

 「ASCOT」研究の詳細は、「ASCOT」研究のホームページまで。このページからは、各種発表資料が入手できるほか、ACCでの発表内容をスライド・音声付きで視聴できる。スライドのダウンロードも可能。発表映像やスライド・音声はACCホームページの「ACC03 online」上にも公開されている。


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