2003.04.02

【日本循環器学会速報】 たばこは「死向品」――第1回禁煙推進市民公開講座より

 「たばこは嗜好品ではなく死向品」「まず吸わない人への情報提供が大切」「禁煙を支援する“道具”が豊富になった今こそ禁煙のチャンス」――。3月30日午後開かれた第1回禁煙推進市民公開講座は、喫煙者にとっては手にした「たばこ」を放り出したくなるような内容が詰まっていた。禁煙者にとっては、日本で禁煙を広げるために、個々人がどのような行動を起こしたらいいのかを考える絶好の機会となった。

 ようやく第1回禁煙推進市民公開講座の開催に漕ぎ着けました――。座長を務めた岐阜大学再生医科学循環内科学教授の藤原久義氏(写真)は、こう切り出した後、「もうしわけない」「情けない」とも口にした。

 日本循環器学会禁煙推進委員会委員長という要職にある藤原氏は、学会が禁煙宣言を発表した2002年に今のポストに就いた。宣言には「禁煙啓発の講演会、市民公開講座などを開催する」としている。「もうしわけない」は、宣言発表からほぼ1年後となってしまった第1回開催をわびたのではない。これまでの学会としての取り組みが遅れていたことを素直に認めたものだった。

 「情けない」。藤原氏は、日本循環器学会会員の喫煙率が「まだ14%程度」であることを紹介し、こう断じた。昨年発表した宣言によると、日本の循環器医療に携わる医師の喫煙率は、男性14%、女性13%であり、米国の20年前の状況よりさらに悪い。「だからまず足元を固めようと考え禁煙宣言を出した」(藤原氏)。

 100人を超える参加者を前に、最初に登壇した国立保健医療科学院研究センターの望月友美子氏(写真)は、「たばこ対策−今世界では何が起こっているか」のテーマで講演した。

 望月氏は、米国をはじめとする先進諸国が国を挙げて禁煙推進に取り組んでいる現状を紹介。一方で、一人取り残された感のある日本の現実を浮かび上がらせた。先に世界保健機関(WHO)がまとめた「たばこ規制枠組み条約」も解説。「現在と将来の世代を守るために、たばこ使用とたばこ煙への曝露を減少させる」ことを目的とする条約で、そのポイントを以下のように要約した。

◆議長テキストの要点(望月氏による)
 課税:課税・価格政策の有用性を認識する
 表示:30%に文言/画像による明確な警告、「ライト、マイルド、低タール」など害が少ない誤解を与える表現は禁止。
 広告:5年以内に全面禁止(憲法上の問題を抱える国は除外)
 責任:たばこ使用に関連した費用をたばこ産業に求める
 財政:国家たばこ対策プログラムへの財政支援
 その他:禁煙希望者への治療、禁煙防止教育、未成年への販売禁止、受動喫煙の低減など



 これに沿う形で望月氏は、たとえば「表示:30%に文言/画像による明確な警告」に関連しては、具体例をスライド(写真)で紹介。日本での取り組みの違いを際立たせた。

 望月氏は講演の最後を、「次代を担う女性と青少年をたばこからいかに守るかという政策合意が世界中で求められている」と締め括った。


 次に登壇した産業医科大学助教授の大和浩氏は、「タバコの常識、ウソ・ほんと」と題して講演した。

 現在8回目の禁煙中であるという大和氏は、海外のたばこ事情から「軽いたばこでも体に悪い」という事実。さらには、空気清浄機に効果がないことの実証データなどを紹介した。吸わない人への情報提供(啓発も含む)が有効である点や自らの実践例も交え、一人でもできるたばこ対策を論じた。



 3番目に登壇した奈良女子大学教授の高橋裕子氏(写真)は、「タバコのない生活を送るには」のテーマで講演した。日本の禁煙支援の草分け的存在でもある高橋氏は、インターネットによる禁煙マラソンを主宰することでも知られる。

 高橋氏は、1.たばこは喫煙者の半数に死亡原因となる喫煙関連疾患を作り出している、2.受動喫煙に対しては、健康増進法の分煙基準など厳しい対応が実施予定である、3.世界的な標準である教育。医療機関の禁煙が日本でも実施されるようになった――との現状認識を示した。

 2の健康増進法とは、今年の5月から施行されるもので、その第25条には、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店、その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」と定められている。努力規定ではあるが、たとえば日本医療機能評価機構が実施している評価項目に受動喫煙の防止策が盛り込まれるなど、病院の評価面ですでに先行しており、病院の取り組みが加速するものとみられる。

 高橋氏は「ニコチン代替療法」を力説。禁煙に取り組みやすい環境が整ってきたとし、「禁煙を支援する“道具”が豊富になった今が禁煙を広げるチャンス」などと強調した。

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