2003.03.31

【日本循環器学会速報】 AMIの長期生命予後が発症後の禁煙で改善、前向き追跡研究で示唆

 急性心筋梗塞(AMI)を起こした喫煙者のうち、退院後に禁煙に踏み切った人では、喫煙を続けた人より死亡リスクが6割低いことがわかった。「禁煙」がAMI患者の長期生命予後を改善することは、海外の疫学研究からは示唆されていたが、喫煙率が高い日本人における疫学データはこれが初めて。AMIの生存退院患者約2500人を平均2.2年間追跡した結果で、大阪大学大学院医学系研究科病態情報内科学の金城都博氏らが、3月30日の一般口演「Acute Coronary Syndrome, Basic/Clinical」で報告した。

 今回行われた解析の対象患者は、大阪大学など25施設が参加して、AMIなど急性冠症候群に関する研究を行う「大阪急性冠症候群研究会」(OACIS)の登録患者。金城氏らは、1998年4月から2000年3月の2年間に登録されたAMI生存退院患者のうち、喫煙状況などに関するアンケートへの協力が得られ、予後が確認できた2570人(平均年齢:63.8歳、うち男性:2010人)を解析対象とした。

 アンケートの実施時期は退院3カ月後で、回収率は78%。予後は99%の患者について確認が取れた。平均追跡期間は2.2年。なお、OACISには2003年2月時点で総計4446人が登録されており、数々の有用な研究報告がなされている(関連トピックス参照)。

 解析対象者のAMI発症前の喫煙状況は、喫煙歴がない人が856人(33%)、禁煙中の人が328人(13%)、喫煙中の人が1386人(54%)。AMI発症前にたばこを吸っていた1386人では、発症後に944人(68%)がたばこを止めたが、442人(32%)は発症後もたばこを吸い続けていた。

 「発症後は禁煙した人」(AMI後禁煙者)と「発症後も喫煙を続けた人」(喫煙継続者)とでは、平均年齢(61.7歳対60.1歳)と再灌流療法の施行率(92.1%対87.5%)にのみ有意差があったが、AMIの重症度や退院時の処方薬など他の背景因子に差はなかった。

 金城氏らは、Cox回帰分析で「AMI後禁煙者」と「喫煙継続者」との生命予後を比較。その結果、多変量解析で背景因子を補正した後も、AMI後禁煙者の死亡ハザード比は0.41(95%信頼区間:0.23〜0.74)となり、「AMI後の禁煙」が長期予後の独立した改善因子であることが明らかになった。

 興味深いのは、AMI後禁煙者と喫煙継続者の生存率曲線が、およそ2年後まではほぼ同様に推移し、その後に乖離していくこと。このデータは、少なくとも2年禁煙しないと、禁煙による生命予後改善効果は出にくいことを示唆している。

 また、OACIS参加施設では、AMIで入院した患者の喫煙状況を調べ、喫煙者には禁煙指導を行っているはずだが、3カ月後の患者アンケートでは「指導を受けたと回答した人は半数程度」(金城氏)だった。禁煙指導の方法に改善の余地があることを示唆するデータで、金城氏は「今回得られた、禁煙の生命予後改善効果を示すデータを患者に提示することで、より有効な禁煙指導が行える可能性がある」と考察している。

■ 関連トピックス ■
◆ 2001.7.9 日本心血管インターベンション学会速報】急性心筋梗塞患者の院内死亡率、年間入院数が多い病院ほど低いことが判明
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