2003.03.30

【日本循環器学会速報】 慢性心不全に対するACE阻害薬、長時間タイプの「1日2回投与」で神経体液性因子が改善

 軽症の慢性心不全患者に対し、通常は1日1回投与される長時間作動型のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を、1日量を保ったまま1日2回投与に切り替えると、ノルエピネフリンなどの神経体液性因子が改善されることがわかった。血圧や心拍数、腎機能に悪影響はみられず、「他の1日2回投与薬と併用する場合や、増量を検討している場合などに、有用な投与戦略となるのでは」と研究グループはみている。研究結果は、3月30日のポスターセッションで報告された。

 この研究を行ったのは、国立大阪病院循環器科の廣岡慶治氏ら。廣岡氏らは、試験の前半と後半で投与方法を相互に切り替えるクロスオーバー形式で、ACE阻害薬の1日1回投与と1日2回投与(1回量は1日1回投与の半量)とを比較した。

 対象患者は、NYHA2度の慢性心不全があり、ACE阻害薬のリシノプリルを3カ月以上服用している32人。うち男性が25人で平均年齢は67.4歳だった。試験期間は6カ月で、3カ月間1日1回服用を続けた後、半量の1日2回服用に切り替える「1回→2回群」(17人)と、逆の「2回→1回群」(15人)とで、切り替えの前後に血圧や腎機能、神経体液性因子がどう変わるかを検討した。心不全の原因疾患や併用薬、試験開始時の神経体液性因子検査値など、両群の患者背景には、心拍数(79.9対66.7)以外に有意差はなかった。

 3カ月後と6カ月後の検査値を比較したところ、1回→2回群、2回→1回群のいずれも、血圧や心拍数、腎機能(クレアチニン値と尿素窒素値で評価)に、投与方法切り替えによる影響はないことが判明。神経障害の指標となる心電図のR-R間隔変動係数(CVRR)にも切り替えの影響は現れなかった。

 一方、神経体液性因子に関しては、ノルエピネフリン値やレニン値が、1日1回投与から2回投与へ切り替えた群でのみ、切り替え3カ月後に有意な低下が認められた。なお、脳性ナトリウム利尿ホルモン(BNP)値やアルドステロン値などには切り替えの影響はみられなかった。

 以上から廣岡氏らは、「慢性心不全患者にACE阻害薬を用いる場合、1日2回投与することで、血行動態や腎機能などを保ったまま神経体液性因子に良い影響が現れる」と結論。廣岡氏らはこの理由を「より安定した血中濃度が得られるためでは」と考えており、「β遮断薬など1日2回投与の薬と併用する場合や、ACE阻害薬の1日量を増やしたい場合などに、ACE阻害薬の1日2回投与は考慮の価値がある」と話した。

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