2003.03.30

【日本循環器学会速報】 慢性心不全治療においてβ遮断薬をもっと使用すべきか−−コントロバーシー3より

 3月29日に行われたコントロバーシー3「心不全」では、三つの今日的なテーマについて討論が繰り広げられた。そのうち、「慢性心不全治療においてβ(ベータ)遮断薬をもっと使用すべきである」では、賛成の立場から国立循環器病センターの安村良男氏が登壇、代表的な臨床試験の結果を紹介しながら、もっと積極的に使うべきと主張した。これに対し、虎の門病院の百村伸一氏は、慎重な立場からディベートを展開した。

 安村氏と百村氏の討論はまず、聴衆が参加するパワーボードによるアンケート調査で始まった。質問は、慢性心不全治療におけるβ遮断薬療法の使用方針について尋ねたが、「積極的に行う」が72%と最も高かった(n=382)。「他の治療法が有効でない場合に限る」が25%、「わからない」が3%だった。

 「もっと使うべき」派に有利な中で安村氏は、これまでの臨床試験をレビュー。まず臨床試験SOLVD を紹介し、ACE阻害薬とβ遮断薬の併用で死亡率が抑えられた結果を解説した。続いて、2001年に発表された論文(Packer M Am.J.Med 2001;110(7A):815)を提示。ACE阻害薬を単独で使用量を増やした群とACE阻害薬にβ遮断薬を追加した群を比較したところ、β遮断薬を追加した方が大幅に死亡のリスクを下げることができた(単独では−8%、β遮断薬追加では−30〜40%)点を強調した。このほか幾つかの論文データを紹介し、「臨床的には、ACE阻害薬あるいはA2受容体拮抗薬と併用することで、より一層の効果が発揮される」と強調した。

 「“不本意ながら”慎重の立場から」と切り出した百村氏は、はじめに次のスライドを提示した。「Okay, I agree that beta-blocker is necessary for treatment of heart failure. But・・・」。

 百村氏も代表的な臨床試験をレビューしながら、結果としてACC/AHAガイドラインや欧州の同様のガイドラインにすでにβ遮断薬療法が組み込まれている点を指摘し、β遮断薬の有用性については十分な理解を示した。ただし「その使用に当たってはガイドラインでも条件がつけられている」と繰り返し、安易な使用には注文をつけた。

 慎重にならざるを得ない理由としては、ドロップアウトが10%ほどある点や日本人のエビデンスがほとんどないこと、多くの試験で示された容量が日本人に使われる通常量より多いこと−−などを強調した。

 両者の討論は、最後に聴衆参加のパワーボードによるアンケート調査で締め括られた。質問は、冒頭で出されたものと同じで、慢性心不全治療におけるβ遮断薬療法の使用方針について尋ねた。その結果、「積極的に行う」が62%で、冒頭の72%から10ポイントも減っていた(n=360)。一方で、「他の治療法が有効でない場合に限る」は25%から36%へ増えていた。なお「わからない」は2%だった。

 今回のコントロバーシーの参加者では、積極使用派が主流であることは変わらなかった。しかし、ディベートの前後で積極使用支持から慎重支持に変更した人が少なくない点も忘れてはならないだろう。

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