2003.03.29

【再掲】【日本循環器学会】 心不全患者の突然死、糖尿病と低EF、LVD拡大が危険因子に−−CHART研究より

 約1000人の慢性心不全患者を2年間追跡した疫学調査「CHART」(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in Tohoku District)から、1.糖尿病の合併、2.左室駆出率(EF)の低下、3.左室拡張期径(LVDD)の拡大−−との3要素が、突然死の危険因子となっていることがわかった。これらの危険因子を二つ以上持っている人では、突然死リスクが有意に高かったという。東北大学大学院循環器病態学助教授の渡辺淳氏らによる研究成果で、3月29日のシンポジウム9「Management of Chronic Heat Failure -Problems in Japan- 」で報告された。

 調査対象は、東北地方に住む安定期の慢性心不全患者1059人。登録条件は、EFが50%以下または左室の拡張期終末径が55mm以上とした。渡辺氏らは、これらの患者について、心不全の原因となっている疾患を調査。その後約2年間追跡して、突然死を起こした人の特徴を分析した。

 まず、原因疾患を1.弁膜症、2.拡張型心筋症(1次性及び2次性。虚血性心筋症合併例は除く)、3.冠動脈疾患(虚血性心筋症と心筋梗塞の既往)、4.左室肥大(特発性と高血圧性)、5.その他−−で分類したところ、若年者では拡張型心筋症や冠動脈疾患、高齢者では弁膜症が相対的に多いことが判明。全体でみた場合、原因疾患として最も多いのは拡張型心筋症(29%)で、次いで弁膜症(28%)、冠動脈疾患(26%)、左室肥大(13%)となった。

 次に渡辺氏らは、これらの患者を平均22.5カ月追跡。追跡期間中に全体の約5%(49人)が突然死し、この期間の総死亡の3割を占めたが、原因疾患別の分析で冠動脈疾患や拡張型心筋症を持つ患者に突然死が有意に多いことが判明した。一方、心不全による入院も含めた心イベント発症率には、原因疾患による違いは認められなかった。

 さらに、糖尿病、EF低値(45%以下)、LVDの拡大(LVDDが60mm以上)のいずれかの条件を満たす患者では、突然死のハザード比が有意に高いことが判明。冠動脈疾患や拡張型心筋症による心不全患者では、非持続性の心室頻拍(VT)も有意な危険因子だった。これらの危険因子は相加的に作用することもわかり、渡辺氏らは、危険因子を二つ以上持つ人を「ハイリスク」と定義。心不全の原因疾患が冠動脈疾患または拡張型心筋症の488人では、ハイリスクの人でのみ、β遮断薬の服用で突然死リスクの低下が認められたという。

 以上から渡辺氏らは、「日本人の場合、心不全の原因疾患が冠動脈疾患または拡張型心筋症で、かつ糖尿病やEF低値、LVDの拡大、非持続性VTを認める人で突然死のリスクが高い」と結論。慢性心不全の診療に当たっては、原因疾患や危険因子数によるリスクの層別化を行い、ハイリスク患者には注意深い経過観察や適切な薬物治療、家庭用の体外式除細動器や植え込み型除細動器など、より踏み込んだ診療体制で臨むべきとまとめた。

■ 訂正 ■
 3段落の「2.肥大型心筋症(虚血性心筋症合併例は除く)」とあるのは、正しくは「2.拡張型心筋症(1次性及び2次性。虚血性心筋症合併例は除く)」でした。また、本文中「肥大型心筋症」と表記しましたが、正しくは「拡張型心筋症」でした。お詫びして訂正致します。

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