2003.03.29

【日本循環器学会速報】 動脈硬化性疾患への「抗酸化薬」、半数が処方経験なし−−コントロバーシー4より

 3月29日に開催されたコントロバーシー4「動脈硬化」では、パワーボードを使った会場アンケートで、聴衆の54%が動脈硬化性疾患に対し抗酸化薬を処方した経験がないことがわかった。一方、「ハイリスク患者には処方する」との回答も17%あり、動脈硬化の成因としての“酸化ストレス”仮説が、医師の処方行動にも一定の影響を与えていることが浮き彫りになった。

 このアンケートは、「抗酸化薬は動脈硬化性疾患の治療に有用か」と題したディベートの前に行われたもの。アンケートではこのほか、「抗酸化薬では動脈硬化性疾患の発症は減らない」との大規模試験結果をどう解釈するかについても調査。聴衆の2割が「研究結果は正しい」と考えているのに対し、7割は「抗酸化薬の投与量など試験設計に問題があるので、慎重に解釈すべき」との意見だった。

 アンケート後に行われたディベートでは、滋賀医科大学内分泌代謝内科の柏木厚典氏が「賛成」、群馬大学第二内科の倉林正彦氏が「慎重」との立場で登壇。柏木氏は主に臨床データ、倉林氏は基礎的な観点に基づき、論陣を展開した。

 柏木氏は、ビタミンEなどの抗酸化薬が、コホート長期追跡研究を含む観察研究で動脈硬化性疾患の予防効果を示しているとのデータを提示。介入研究でも、「ビタミンEとして天然型のαトコフェロールを用い、血清中の濃度を確認しており、かつ投与量が十分な試験では“有効”との結果が大半」と強調した。

 天然型ビタミンEを用いた「HOPE」(Heart Outcomes Prevention Evaluation)試験でネガティブな結果がでている点に関しては、「試験ではもう一つの“実薬”として、抗酸化作用が指摘されているラミプリルが用いられており、ミックスされて効果がわかりにくくなった」と解釈。1.ビタミンEは生物学的利用効率が高い天然型を用いる、2.投与量はビタミンEで1日800国際単位(IU)以上、ビタミンCで1日1000mg以上用いる、3.ビタミンEは食事と共に摂取する−−などの点に配慮すれば、あくまで補助的な位置付けではあるが、動脈硬化性疾患の治療に抗酸化薬は有用だと論じた。

 一方の倉林氏は、「介入研究はこれまで10報が報告されているが、うちポジティブなのは4報のみ。しかも一部の試験には疑義が唱えられており、実際のポジティブ率は2〜3割」と指摘。ビタミンEは試験管内で確かに抗酸化作用を示すものの、実際の生体内では、酸化を抑制する方向だけでなく促進する方向にも働くと述べた。

 その根拠として倉林氏が提示したのは、患者から採取した動脈硬化組織中のビタミンE量が多いほど、脂質の過酸化が進んでいるという報告(Atherosclerosis;126,289,1996)。抗酸化作用を発揮する過程でビタミンEが酸化物になり、それが脂質成分と反応して過酸化脂質を作るとの理論を裏打ちするデータだ。この他、1.酸素ラジカルは組織内で産生されるが、脂溶性ビタミンであるビタミンEは組織内への移行性が低い、2.ビタミンEは細胞外マクロファージのミエロペルオキシダーゼ(MPO)を阻害できず、MPOによる低比重リポ蛋白(LDL)の酸化を抑えられない−−などの点を鑑みると、ビタミンE単独では動脈硬化性疾患の発症・進展を十分抑制できないと強調した。

 両者の意見が一致したのは、「効く人と効かない人の見極めが大切」という点。2月に発表された「ASAP」(Antioxidant Supplementation in Atherosclerosis Prevention)追跡研究(関連トピックス参照)では、「元々の酸化ストレスが強い人ほど効果がある」(倉林氏)との結果が得られており、喫煙者やプラークサイズが大きい人、血中抗酸化物質の低下例など、症例によっては大きな効果が期待できるとした。

■ 関連トピックス ■
◆ 2003.2.27 ビタミンEとCの併用で頚動脈肥厚が抑制−−ASAP追跡研究

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