2003.03.29

【日本循環器学会速報】 左主幹動脈病変に対するインターベンションは是か非か−−コントロバーシー1より

 3月28日午前に行われたコントロバーシー1「冠インターベンション治療」では、三つのテーマについて、それぞれの対立軸を鮮明にした二人の演者が登壇し、活発な議論を展開した。その中で、「左主幹動脈病変に対するインターベンションは是か非か」では、座長の一人でもある京都大学の木村剛氏が賛成の立場から発言。これに対し、反対の立場から東京女子医大の西田博氏が応じ、双方のディベートを通じて、左主幹動脈病変に対するインターベンションが抱える課題が浮き彫りにされた。

 ディベートはいささか木村氏不利の環境で始まった。聴衆が参加するパワーボードによるアンケート調査では、「左主幹動脈病変に対する治療の第一選択は何か」との質問に、「まずPCI」と回答したのは5%に過ぎなかった。「まずCABG」との回答が84%と圧倒的に多く、「原則決めていない」が11%だった(n=179)。

 PCI実施で最先端を行く木村氏は、小倉記念病院での自験例を紹介。1991年3月から2002年12月までに、左主幹動脈病変に対するインターベンションを実施した症例は182例に上っている。院内死は1例(0.5%)と良好な成績だった。ただし、再PCIが21%、慢性期血行再建(TLR)も19%あったという。

 外科手術(271例)との比較では、外科手術の院内死が3例(1.1%)で、PCI(0.5%)の方が低かった。ただし、2年後の生存率は、外科手術が95.2%、PCIが89.1%と外科手術が優位。また、2年後の時点で死亡あるいはAMIやCABGに至らなかった事例(MACEフリー)の割合は、外科手術が94.9%、PCIが77.6%で、やはり外科手術に軍配が上がっていた。これらの点を踏まえ木村氏は、「再PCIやTLRが20%ほどという欠点はあるが、症例を選別すれば、左主幹動脈病変に対するPCIはいずれ外科手術に取って代るだろう」と主張した。

 一方の西田氏は、氷山のスライドを提示。「氷山の一角(トップ)であるチャンピオンの成績をもって判断しては全体を見誤ることになる」と切り出した。あくまで全国的なデータによって比較すべきと主張。自ら学術委員を務める日本胸部外科学会が毎年実施しているCABG実態調査を紹介し、左主幹動脈病変に対するPCIの全国規模の調査との比較を展開した。それによると、CABGの死亡率は、左主幹動脈病変で1.22%、左主幹動脈病変以外で1.00%だった。これに対し、PCIの方は左主幹動脈病変で3.8%、左主幹動脈病変以外で0.6%であり、左主幹動脈病変では実に3倍の開きがあったという。

 二人のディベート後、再度パワーボードによるアンケート調査が行われたが、「左主幹動脈病変に対する治療の第一選択は何か」との質問に、「まずPCI」と回答したのは4%(1回目は5%)と変わらなかった。やはり「まずCABG」との回答が88%(1回目84%)と圧倒的に多く、「原則決めていない」が8%(1回目11%)だった(n=142)。

 全体的に「左主幹動脈病変に対するインターベンションはまだこれから」という印象が残ったが、パワーボードによるアンケート調査で一つ興味ある結果が出ている。それは「自分が(左主幹動脈病変に対する治療を)受けるとしたらどれか」の問に、「自分の施設でPCI」が14%、「他施設でPCI」が9%で合わせて23%が「PCI」を支持していた(n=141)。ちなみに「自分の施設でCABG」26%、「他施設でCABG」50%でCABGが高かった。なお「薬物治療」は1%に過ぎなかった。

 治療の第一選択の質問で「まずPCI」と回答したのが5%程度であったことを考えると、患者の立場からは「左主幹動脈病変に対するインターベンション」に対する期待感が強いことを示唆していた。

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