2003.03.29

【日本循環器学会速報】 医療費削減、患者本位医療の確立と医療の質改善が「日本の医療」の3課題−−会長講演より

 学術集会の会長講演では、教室で得られた研究成果について話すのが通例。しかし、ここではあえて、むしろ専門外である「日本の医療」について取り上げたい−−。3月28日の会長講演には、今期会長を務める九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授の竹下彰氏が登壇。「我々医師が、医療をよりよい方向に持っていく上で大きな役割を果たさなければならない」(竹下氏)との決意の上に、日本の医療が内包する諸課題を示し、聴衆に“意識改革”を促した。

 竹下氏は冒頭、日本人の平均寿命や乳児死亡率などがここ30年改善を続け、今では世界一の地位にあることを提示。世界保健機関(WHO)にも認定された「世界一の保健医療水準」が、国民皆保険制度と出来高払いという、日本の医療制度を特徴付ける制度により確保されたとの見方を示した。

 その上で竹下氏は、この独特の制度下で、医療の供給過剰による効率低下や緊縮財政下での財政主導の診療報酬改訂、患者ニーズの軽視など、様々な問題点が生じたと指摘。1.医療費対策、2.患者本位の医療の確立、3.医療の質の改善−−の三つが、日本の医療における大きな課題となったと強調した。

 次に竹下氏は、この3点に対する現状分析と、改善に向け医師が果たすべき役割について、具体例を挙げて詳細に論じた。

 まず、患者本位医療の確立に関しては、インフォームド・コンセントやカルテ開示、病院・医師情報など医療情報の提供、セカンドオピニオン制度の確立、小児医療、救急医療など患者ニーズに即した医療サービスの提供、アメニティー面など病院における患者サービスの充実などが、現状では不十分であると指摘。ことに医療情報に関しては「患者が医療内容を選択できるだけの情報を、はたしてどれだけ提供できていたか、我々は反省しなければならない」と述べた。

 また、医療の質の改善については、「安心と安全」という観点から課題を抽出。1.診療の標準化、2.医療機能の集約化と連携、3.患者への情報提供、4.病院の医療サービス改善、5.安全対策−−との5課題を挙げ、「各医療機関でこうした方向への施策を進めるインセンティブとなるよう、診療報酬で誘導する仕組みが必要。その際は行政・政治に任せるのではなく医師からも働きかけるべき」と訴えた。

 竹下氏は最後に、医療費対策という観点から、種々の改善策を列挙した。具体的には混合診療の導入(特定療養費制度の拡大)や病床数の抑制、入院適応の見直し(社会的入院の削減)、医療費の包括化、医療機器の高価格につながる日本独自の流通制度の改善、治験など臨床研究に対する医療機関側のインフラ整備−−などだが、なかでも病床数の抑制は、医師や看護師にゆとりを生み、医療費削減だけでなく医療の質改善や患者本位医療の確立にも役立つと強調。「我々医師も、こうした様々な問題の中で日常診療を行っていることを自覚し、今後このような面にも目を向けていくべき」と会場に呼びかけた。

========================================================================
「循環器治療の最新動向に関する調査」を実施中
 MedWaveは日本循環器学会の開催に合わせ、「循環器治療の最新動向に関する調査」を実施しています。日進月歩の激しい領域にあって、医療現場の第一線でご活躍の医師の方々に、最近、相次いで公表された大規模臨床試験を中心に、それぞれの結果に対する評価や診療への影響などをお伺いし、「循環器治療の今」を明らかにすることを目的にしております。ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。アンケート画面はこちらhttp://webres.nikkeibp.co.jp/user/jsc2003.htmlから。
========================================================================

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. トイレにこそ、人間の尊厳がある Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」 FBシェア数:479
  2. 「どうしてこんな急に!」急変時の家族対応は 平方眞の「看取りの技術」 FBシェア数:12
  3. 輸液の入門書 医学書ソムリエ FBシェア数:0
  4. オピオイドの用量調節とスイッチングの基本方法 国分秀也の「ゼロから学ぶオピオイド」 FBシェア数:105
  5. わいせつ容疑の外科医、初公判で無罪を主張 「乳腺科医のプライドにかけて無罪を主張します」 FBシェア数:582
  6. 「真面目なメンタルケア」が真面目ちゃんを苦しめる 研修医のための人生ライフ向上塾! FBシェア数:0
  7. 難治性皮膚潰瘍を再生医療で治す リポート◎大リーガー田中将大投手のケガも治したPRP療法とは? FBシェア数:20
  8. インフル入院患者、届出数が100人を超える インフルエンザ診療Next:トピックス FBシェア数:109
  9. 医療者は認知症家族との暮らしが分からない 患者と医師の認識ギャップ考 FBシェア数:196
  10. 下血? 血便? 赤いの? 赤くないの? 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:180