2003.03.28

【日本循環器学会速報】 脂質低下によらないスタチンの作用、“臨床的意味”巡り議論−−コントロバーシー2より

 3月28日に開催されたコントロバーシー2「コレステロール低下療法」では、「スタチンの多面的作用は臨床的意味があるか」と題したディベートを開催。標題に「賛成」との立場で順天堂大学循環器内科学の代田浩之氏、「慎重」派として米国Harvard医科大学Brigham and Women's病院循環器科の相川眞範氏が登壇し、熱い意見を戦わせた。

 脂質低下薬のスタチン系薬には、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬でしばしば強調される“降圧によらない(臓器保護)効果”のような、“脂質低下によらない作用”がある−−。この「多面的作用」が存在するという点については、両者とも肯定。心イベントの抑制に対しては、多面的作用のうち抗炎症・血管内皮機能改善によるプラーク安定化効果が最も効いているであろうという点でも両者の意見は一致した。

 意見が分かれたのは、心イベントの抑制に、この作用がどの程度影響しているか。代田氏は、疫学データと介入研究の結果を比較。疫学データでみられる「低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値がある程度低くなると心イベント発症率の低下幅が頭打ちになる」との現象が、「HPS」(Heart Protection Study)試験ではみられず、「LDLコレステロール値が低いほど心イベント発症率が直線的に下がる」ことを提示し、「LDLコレステロール値低下作用以上の作用がスタチンにはある」と強調した。

 一方の相川氏は、ウサギを使った数々の実験から、食事療法のみでLDLコレステロール値を下げても、血管内皮機能の正常化が得られることを提示。スタチンでみられるプラーク安定化効果も同様に、主にLDLコレステロール値を下げる作用から来ているとした。

 また、いわゆる「親水性スタチン・パラドックス」に関しては、両者の解釈が全く分かれた。このパラドックスは、親水性のスタチンよりも、疎水性のスタチンの方が末梢組織や細胞内に移行しやすく、理論的には疎水性スタチンの方が「多面的作用」が強く出そうなものなのに臨床データでは違いがみられないというもの。相川氏はこの点こそが、多面的作用より脂質低下作用の方が心イベント抑制に効いている傍証だと指摘。一方の代田氏は「親水性スタチンは、血管に対する直接作用はないものの、肝臓でのイソプレノイド生合成阻害作用を通して“脂質低下によらない作用”を発揮する」との説を紹介し、親水性スタチンでも多面的作用は矛盾無く起こり得るとした。

 ディベート後の質疑応答では、「スタチンの心イベント抑制作用の何%くらいが“脂質低下によらない作用”によると思うか」との趣旨の質問が座長から出された。これに対し、“賛成派”の代田氏は一転、「個人的には5〜10%くらい」と控えめな数字を呈示。逆に“慎重派”の相川氏は「スタチンの種類による」と、具体的な数字は示さなかったものの、スタチンによっては心イベント抑制作用のかなり大きな部分を多面的作用に依存しているとの含みを持たせた。

会場の評価は「心イベント抑制におけるスタチンの効果は脂質低下作用が主体」へシフト

 ディベートの前後には、例年通り会場アンケートが実施された。このアンケートでは、ディベートを聞いて、聴衆の意見がどう変わったかが浮き彫りにされる。今回のディベートに関しては、1.スタチンの多面的作用をどの程度重視するか、2.大規模臨床試験結果などにスタチンの多面的作用がどの程度影響しているか−−の2点を調査。それぞれ約200人の聴衆が回答した。

 一つ目の設問に対しては、多面的作用を「少し意識している」(前後で47%→50%)、「重要視している」(同:40%→42%)との回答がディベート後に増えた一方、「脂質に対する効果以上である」(同:5%→3%)と考える人は減少した。二つ目の設問では、「5%以下」(同:14%→15%)、「10〜20%程度」(同:31%→30%)との回答比率はディベート前後でほぼ不変。しかし、「20%以上」(同:16%→7%)と考える人が大幅に減り、その分が「5〜10%程度」(38%→47%)に積み増されるとの結果になった。

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