2003.03.27

可溶性CD40リガンド、ACSの予後マーカーに

 血中の可溶性CD40リガンド(sLCD40)量が、急性冠症候群(ACS)の新しい予後マーカーとなる可能性が出てきた。再発ACS患者を対象とした臨床試験参加者データの解析で、可溶性CD40リガンド量が一定の閾値を越えた人では、6カ月以内に死亡または非致死性心筋梗塞を起こすリスクが3倍近くになることが判明したため。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌3月20日号に掲載された。

 CD40リガンドは、B細胞や抗原呈示細胞、血管内皮細胞など様々な細胞上に発現する膜蛋白「CD40」に対するリガンド(結合物質)。CD40とCD40リガンドとの相互作用は、生体内の免疫系や凝固系の制御において、大きな役割を果たしていることがわかっている。なかでも可溶性CD40リガンドは、血小板が活性化される際に放出されるため、この量が「血液の固まりやすさ」を反映、ひいては予後因子となる可能性が示唆されていた。

 ドイツFrankfurt大学分子循環器学部門のChristopher Heeschen氏らは、再発ACS患者を対象としたプラセボ対照試験「CAPTURE」(c7E3 Fab Antiplatalet Therapy in Unstable Refractory Angina)の参加者データを、血中のsLCD40値で層別化。同値が予後に与える影響について検討した。解析対象患者数は1088人で、プラセボ群、抗血小板薬(糖蛋白2b/3a受容体拮抗薬のアブシクシマブ)群ともに544人。

 その結果、プラセボ群に割り付けられた人のうち、sLCD40値が高値(>5.0μg/l)だった221人では、年齢、性別や既往症などで補正した後も、予後が有意に悪いことが判明。死亡+非致死性心筋梗塞の6カ月発生ハザード比は、補正後も2.71(95%信頼区間:1.51〜5.35)となった。一方、抗血小板薬群に割り付けられた人では、sLCD40値による予後の差がなかった。

 また、sLCD40値が高値の人だけでプラセボ群と抗血小板薬群を比較すると、死亡+非致死性心筋梗塞の6カ月発生ハザード比が0.37(95%信頼区間:0.20〜0.68)となり、sLCD40値が高値の人では、アブシクシマブ投与で心イベント発症を6割抑制できることがわかった。

 次に研究グループは、別の胸痛患者626人についてsLCD40値を測定。626人中308人は心筋壊死マーカーのトロポニンTが高値かつ心電図のST部上昇が認められず、ACSと診断されたが、これらの患者ではsLCD40値が有意に高値だった。胸痛患者全体でみた場合、sLCD40値が高値の患者では、死亡+非致死性心筋梗塞の6カ月発生ハザード比が6.65(95%信頼区間:3.18〜13.89)と有意に予後が悪かった。sLCD40値とトロポニンT値、炎症マーカーのC反応性蛋白(CRP)値などとは、特に相関がみられなかった。

 以上から研究グループは、ACSなど不安定冠動脈疾患がある患者の場合、sLCD40値がトロポニンT値などとは独立の心イベントマーカーになると結論。sLCD40値は、アブシクシマブ投与による利益を最も受けるハイリスク患者の同定に役立つとした。

 なお、この研究ではsLCD40値の閾値を5.0μg/lとしたが、論文に対する論説(commentary)では、1.「CAPTURE」研究参加者の7割が男性、2.健常女性を対象とした研究で、より低い閾値から心血管疾患リスクが上昇すると報告されている−−との理由を挙げ、閾値の設定にはより広範囲の患者を対象とした追加研究が必要だと指摘している。

 この論文のタイトルは、「Soluble CD40 Ligand in Acute Coronary Syndromes」。アブストラクトは、こちらまで。

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