2003.03.19

ホルモン補充療法にQOL改善効果なし 「WHI」試験サブ解析がNEJM誌で早期公開

 昨年7月に一部が早期中断された、ホルモン補充療法(HRT)の臨床試験「WHI」(Women's Health Initiative)のサブ解析で、HRTに“臨床的に意味のある”生活の質(QOL)改善効果がみられないことが明らかになった。原著論文はNew England Journal of Medicine(NEJM)誌5月8日号に掲載予定で、臨床現場への影響の大きさを鑑み、3月17日から同誌ホームページ上で早期公開された。

 今回QOLに関するサブ解析が行われたのは、「WHI」試験のうち、エストロゲン・プロゲスチン合剤を用いるHRTのプラセボ対照試験。昨年7月、HRT群で乳癌や冠動脈疾患、脳卒中などが増加することがわかり、予定より3年早く中断されていた(関連トピックス参照)。

 対象患者は、50〜79歳の閉経後女性1万6608人で、平均年齢は63歳。うち8102人はプラセボ群、8506人はHRT群(結合型エストロゲン0.625mgと酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mgの合剤を服用)に割り付けられた。QOL測定は、試験開始時と1年後は全員、3年後は1511人について行われた。

 その結果、QOLを構成する要素のうち、全般的な健康度や活力、精神的な健康度、うつ症状、性的満足度については、1年後の時点で両群に有意差がないことが判明。睡眠障害、身体機能、身体の痛みに関しては、統計学的な差が認められたが、「臨床的には意味のない差」と研究グループは考察した。なお、3年後の時点ではどの項目も有意差はなかった。

 また、試験開始時に比較的若年(50〜54歳)で、のぼせなどの症状が中等度〜重度の人だけで検討すると、HRTには有意な症状改善効果があり、睡眠障害も改善されていた。しかし、その他のQOL関連項目には改善が認められなかったという。

 以上から研究グループは、「この試験に参加した閉経後女性に関し、エストロゲン・プロゲスチン合剤を用いるHRTは、健康関連QOLに対して臨床的に意味のある効果を及ぼさない」と結論付けている。

 ただし、「WHI」試験への参加者は60歳代女性が中心で、多くは閉経からある程度時間が経過しており、のぼせや寝汗などの、いわゆる更年期症状を呈していた人は少ない。また、激しい更年期症状がある人は、プラセボと実薬のどちらが割り付けられるかが不明な臨床試験には、最初から参加しなかった可能性もある。こうした点を鑑みると、一律に「HRTにQOL改善効果なし」として良いかに関しては今後も議論が続きそうだ。

 なお、試験に用いられた結合型エストロゲン・プロゲスチン合剤については、低用量製剤(結合型エストロゲン0.45mgと酢酸メドロキシプロゲステロン1.5mgの合剤)が先週、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けたばかり。製造元の米国Wyeth社は初夏にも販売を開始する予定だが、今回の「WHI」サブ解析の結果が、売れ行きにどのような影響を及ぼすかにも注目したい。

 この論文のタイトルは、「Effects of Estrogen plus Progestin on Health-Related Quality of Life」。アブストラクトは、こちらまで。結合型エストロゲン・プロゲスチン低用量製剤の承認に関しては、Wyeth社の3月13日付ニュース・リリースまで。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.7.11 NHLBIが臨床試験「WHI」を早期中断、ホルモン補充療法に乳癌、心血管疾患の予防効果なし

■ 参考トピックス ■
◆ 2003.1.15 ホルモン補充療法薬の添付文書が米で改訂、WHI試験結果が「警告」欄に

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