2003.03.16

【日本呼吸器学会速報】 日本のCOPD医療費は年間8300億円、「急性増悪のコスト」への啓蒙が不可欠に

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)にかかる医療費が、わが国では年間8300億円に達すると見積もられることがわかった。内訳は、安定期が1806億円(在宅酸素療法=HOTの医療費も含む)、急性増悪期が6194億円で、厚生労働省の見積もり(1857億円)の4倍以上。研究結果を発表した東京都老人医療センター呼吸器科の桂秀樹氏は「厚生労働省の見積もりでは、急性増悪期の医療費が、肺炎や急性上気道炎など他の疾患に計上されているのでは」と考察している。研究結果は、3月14日のワークショップ4「慢性呼吸不全の総合的アプローチ:COPDの急性増悪を回避するための戦略」で報告された。

 桂氏らはまず、同センターのCOPD患者151人を1年間前向きに追跡、急性増悪を起こす患者の比率などを調べた。次に、同センターなど5カ所の医療機関を受診している安定期COPD患者216人と、COPDの急性増悪のため同センターに入院した患者89人について、レセプトから医療費を算出。COPDの安定期と急性増悪期について、患者一人当たりの医療費がどの程度になるかを求めた。

 同センターを受診する患者151人の平均年齢は75.5歳で、重症度は米国胸部疾患学会ATS)ステージの2〜3が74%。1年間で47人(31%)が急性増悪のため救急外来を受診、23%が入院した。救急外来を受診した47人の4割は、1年間に2回以上急性増悪発作を繰り返していた。

 医療費に関しては、安定期COPD患者の場合、HOT療法無施行者で年2万円、HOT療法施行者で年11万3700円と、HOT療法の施行の有無で医療費が大きく異なることが判明。ところが、COPDの急性増悪による入院加療を受けると、1回の入院で64万円がかかり、「急性増悪」の方が一般に高コストと考えられているHOT療法よりはるかに医療費への影響が大きいことがわかった。

 このデータに基づき、桂氏らは、日本全体でCOPD患者にかかる医療費を算出。日本のCOPD患者数に関しては諸説あるものの、桂氏らは「潜在患者数は530万人」(成人の8.3%)との説を採用、うち50万人がCOPDとの診断を受け、その10分の1の5万人がHOT療法を施行中と仮定して医療費を求めた。なお、実際のCOPD受診患者総数は不明なものの、HOT療法を受けているCOPD患者は約5万人(HOT療法全体では13万人)であることが知られている。

 その結果、わが国で1年間にかかるCOPDの安定期医療費は1806億円、急性増悪期の医療費は6194億円となり、総額は8500億円と見積もられることが判明。この額は、厚生労働省推計の1857億円(「平成12年度国民医療費」による、疾病分類は「気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患」)の4.5倍になることが明らかになった。

 桂氏は「COPDは、特に急性増悪を起こした場合、大きな経済負担になる。しかし、そのことは患者や医療従事者に加え、社会的にも知られていない」と指摘。経済負担という観点からも、社会に対してCOPDの急性増悪予防の大切さを啓蒙することが急務であり、世界保健機構(WHO)と米国国立心肺血液研究所(NHLBI)の協力の下に作成されたCOPDの国際診療ガイドライン「GOLD」も、この社会啓蒙に焦点を当てているのではと結んだ。

========================================================================
◆市中肺炎診療の実態調査2003

 MedWaveは今年も「市中肺炎診療の実態調査」を実施致します。本調査は、医療現場の第一線で活躍されている先生方に、外来で遭遇する肺炎(市中肺炎)の診療方針や考え方、抗菌薬の処方経験、市中肺炎診療に関する情報ニーズなどをお伺いし、市中肺炎診療の実態を明らかにすることを目的としております。調査結果は後日、MedWave等で紹介する予定です。ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
◇アンケート画面は以下です。
http://webres.nikkeibp.co.jp/user/MW203122.html
========================================================================

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 50歳男性、夜中の意識障害、痙攣 日経メディクイズ●心電図 FBシェア数:0
  2. 85歳の癌患者に標準治療を行いますか? リポート◎高齢癌患者の治療適否は予後とQOLへの影響で判断 FBシェア数:118
  3. 食べられない高齢者にはこう介入する Dr.西&Dr.宮森の「高齢者診療はエビデンスだけじゃいかんのです」 FBシェア数:128
  4. ズバリ!up to date問題の出題のヤマはこ… 総合内科専門医試験 「一発合格」への道 FBシェア数:37
  5. 「学会の指針を転載したら金を払え」は正当か 弁護医師・田邉昇の『医と法の視点』 FBシェア数:65
  6. 幻のダイヤモンド聴診器 倉原優の「こちら呼吸器病棟」 FBシェア数:8
  7. 医療保険より100倍マシ! 学資保険の選び方 Dr.Kの「医師のためのバリュー投資戦術」 FBシェア数:19
  8. その図表、そんなタイトルじゃ伝わりませんよ 英文校正者が教える医学論文執筆の極意 FBシェア数:26
  9. 麻疹の1例目はブラリとやってくる 学会トピック◎第92回日本感染症学会・第66回日本化学療法学会 FBシェア数:334
  10. 大阪北部で地震発生! 救急医の1日 薬師寺泰匡の「だから救急はおもしろいんよ」 FBシェア数:159
医師と医学研究者におすすめの英文校正