2003.03.16

【日本呼吸器学会速報】 高齢者の肺炎予防、口腔ケア、不顕性誤嚥の予防と免疫力強化が鍵に

 抗菌薬の品目数が増え、様々な原因菌に対する治療が可能になっているにも関わらず、肺炎による死亡率は1980年代以降微増に転じている。その背景にあるのは、高齢者肺炎における、依然として高い死亡率である−−。筑波大学臨床医学系呼吸器内科の関澤清久氏は、3月14日のプレナリーシンポジウム「21世紀の呼吸器病学」で、高齢者肺炎の予防に関する最新の知見を紹介。高齢者の肺炎を予防するためには、口腔ケアや不顕性誤嚥の予防、免疫力の強化などが鍵になると訴えた。

 関澤氏はまず、高齢者の肺炎発症には、1.口腔−咽頭領域の細菌叢の変化、2.咳反射、嚥下反射などの防御反射機能の低下、3.気管の粘液絨毛輸送系の機能障害、4.肺実質の免疫能低下−−などが関与していると指摘。こうした機序に応じ、適切な介入を行うことで、肺炎が予防できるとのエビデンスが集積されつつあることを紹介した。

 例えば口腔の細菌叢変化に対しては、口腔内の清潔を保つことで、肺炎発症を3分の2に減らせるとの介入成績が得られている。このような口腔ケアに加え、「細菌の接着を妨げるような受容体阻害薬も、今後は有望な予防手段になる可能性がある」と関澤氏は言う。

 咽頭の防御反射に関しては、脳梗塞の既往者では反射能が著しく低下しており、関澤氏らが高齢者545人を2年間前向きに追跡した成績では、両側性の基底核脳梗塞患者の肺炎発症率は約50%と、脳梗塞がない高齢者の10倍近くになった。こうした防御反射低下を防ぐには、まずは脳梗塞の予防が第一。しかし、既に脳梗塞を起こした人に対しては、睡眠中の“不顕性誤嚥”の予防が大切だと関澤氏は考えている。

 不顕性誤嚥の予防策として、関川氏らが注目するのがアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬。脳血管障害の既往がある高齢高血圧患者に、ACE阻害薬またはACE阻害薬以外の降圧薬を投与したところ、ACE阻害薬群で有意に肺炎の発症が抑制されたという(Lancet;352,1069,1998)。

 一方、肺実質の免疫能低下に対しては栄養状態の改善が有効であり、経管栄養を受けている高齢者では受けていない人より有意に肺炎発症率が低いことが報告されている。ただし、「寝た切りの人では、経管栄養を行っても肺炎発症率が下がらない」とのデータがあることを関澤氏は紹介。経管栄養チューブがかえって誤嚥を増やしたり、食道下部を開いて胃液の逆流を起こしている恐れがあるためで、「寝た切りの人では、むしろ胃瘻造設による栄養を行った方が良い」と関澤氏は話した。

 免疫能低下に対するもう一つの介入手段はワクチンで、既にインフルエンザワクチンについては、高齢者の抗体産生能は若年者より劣るものの、発熱や呼吸器疾患、入院の防止効果が確認されている。この点に関し関澤氏は、今後はインフルエンザなどのウイルス性疾患に加え、各種の細菌に対するワクチンも、高齢者肺炎の予防という観点で重要になると述べた。

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◆市中肺炎診療の実態調査2003

 MedWaveは今年も「市中肺炎診療の実態調査」を実施致します。本調査は、医療現場の第一線で活躍されている先生方に、外来で遭遇する肺炎(市中肺炎)の診療方針や考え方、抗菌薬の処方経験、市中肺炎診療に関する情報ニーズなどをお伺いし、市中肺炎診療の実態を明らかにすることを目的としております。調査結果は後日、MedWave等で紹介する予定です。ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
◇アンケート画面は以下です。
http://webres.nikkeibp.co.jp/user/MW203122.html
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