2003.03.03

ペプチド医薬に黄信号?、再投与でマウスの大半が死亡

 ペプチド医薬を用いた免疫療法で、患者を死に至らしめるような、深刻な副作用が起こる恐れがあることがわかった。1型糖尿病を自然発症するマウスを使った実験で、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)65ペプチドを投与し、4週後に再投与(チャレンジ)したところ、全例が激しいアナフィラキシー・ショックを起こし、マウスの86%が死亡したという。実験結果は、生物学分野のオンライン・ジャーナルであるBMC Immunology誌に掲載された。

 1型糖尿病の発症には、細胞性免疫を活性化させる1型ヘルパーT細胞(Th1)と、液性免疫を担う2型ヘルパーT細胞(Th2)のバランスが深く関与していると考えられている。1型糖尿病などの自己免疫疾患患者では、このバランスがTh1優位に傾いていることが知られている。

 GADは、人間や1型糖尿病自然発症マウス(NOD;non-obese diabetic mouse)の、膵臓β細胞に対する自己抗原で、「膵臓β細胞特異的なGAD発現」が1型糖尿病発症の鍵を握るとされる。そこで発案されたのが、GADペプチドを用いる免疫療法。生後早い時期にGADペプチドを投与することで、Th1・Th2バランスを整えてGADに対する免疫寛容状態を誘導すれば、1型糖尿病の発症を予防できるとの仮説が立てられた。

 この仮説に基づき、米国Stanford大学の研究グループは、生後8〜9週のメスのNODマウス14匹にGAD65ペプチドを注射。1週間隔3回投与で“免疫した”後、4週後に再度投与を行い、GADによるペプチド免疫の「再チャレンジ効果」を調べた。

 すると、GAD65ペプチドの再チャレンジを受けた14匹はすべて、注射直後に体温が1度以上低下するなど、激しいアナフィラキシー・ショック状態を呈示。30分以内に12匹(86%)が死亡した。このようなショック状態は、同時に試したほかのペプチドでもみられたが、頻度は42〜43%、死亡率は33〜80%だった。なお、生理食塩水を投与したマウスでは、こうしたショック反応は一切みられなかった。

 ただし、人を対象とした臨床試験では、これまで少なくとも200人以上がペプチド医薬の投与を受けているが、局所のアレルギー反応が10%前後に生じるだけで、このような激しいアナフィラキシー・ショック事例は報告されていないという。この理由として挙げられているのは、人のアナフィラキシー・ショックは主に免疫グロブリンE(IgE)の介在で起こるということ。一方のマウスではIgEとIgGの2ルートがあり、IgGが主体だと考えられている。

 しかし、研究グループは「マウスのアナフィラキシー・ショックでも、IgEが何らかの役割を果たしていることは否定できない」と指摘。Th1優位性の自己免疫疾患患者はNODマウスと同様の免疫異常を内在している可能性もあり、臨床応用に際しては十分に注意を払うべきだと強調している。

 この論文のタイトルは、「Severe anaphylactic reactions to glutamic acid decarboxylase (GAD) self peptides in NOD mice that spontaneously develop autoimmune type 1 diabetes mellitus」。現在、全文をこちら(PDF形式)で閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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