2003.02.27

イオン溶出少ないインプラント用合金、既存材料と同程度の生体適合性を確認

 2月21日から開催された日本歯科薬物療法学会で、愛知学院大学歯学部歯科薬理学講師の新井通次氏を中心とする研究グループは、同大学歯科理工学助教授の福井寿夫氏らが開発した合金がアレルギーなどを起こし難い歯科インプラント用材料として有望であることを発表した。現在、歯科インプラント用として最も多く使用されている合金は、主体となるチタンに生体適合性を向上させるためにアルミニウムとバナジウムを加えたもの(Ti-Al-V)。しかしこの合金では、含有金属がイオンとして比較的溶出しやすいため、金属アレルギーや細胞毒性反応を引き起こす可能性があった。

 新たな合金は、チタンにイオン化傾向の低いニオビウム、タンタル、ジルコニウムを加えたもの(Ti-Nb-Ta-Zr)。新井氏らは、マウスの骨からカルシウムを取り除く処理をして作ったペレットに合金を貼り付け、これをマウスの背部筋膜上に移植。4週間後に、カルシウムがペレットに蓄積した量を測定した。比較として、純チタンとTi-Al-V合金でも同様の実験を行った。

 インプラントの土台となる合金材料が歯槽骨に定着するには、金属と接触した骨表面で再石灰化が起こる必要がある。この実験でカルシウムの蓄積量が多ければ、実際に合金をインプラント材として使用したときに高い適合性を期待できる。

 その結果、Ti-Nb-Ta-Zr合金ではカルシウムの蓄積量が平均75.6マイクログラムと最も多く、続いてTi-Al-V合金の平均50.4マイクログラム、純チタンの平均36.6マイクログラムだった。Ti-Nb-Ta-Zr合金と純チタンの結果には有為差があったが、Ti-Nb-Ta-Zr合金とTi-Al-V合金の結果には有意差がなかった。

 同大学歯科理工学助教授の福井氏は「Ti-Nb-Ta-Zr合金は、Ti-Al-V合金よりもしなやかで柔らかいという特徴があり、物性的にも優れている。加工技術も既に確立しており、来年度から人での臨床試験を開始できる見込みだ」と話す。

 新しい歯科用インプラント材料の開発は、5年前から同大学歯学部の各講座が共同で取り組んでいるプロジェクト。福井氏は「特定の金属にアレルギー症状を起こすなど患者の体質に合わせて、歯科用金属材料の成分を自由に変えられる技術を開発するのが最終目標だ」としている。(河野修己、医療局開発)

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