2003.02.26

静脈血栓症のプラセボ対照低用量ワルファリン試験「PREVENT」が早期中断、ワルファリン群で血栓症再発が大幅低下

 米国国立衛生研究所(NIH)の下部機関、米国国立心臓肺血液研究所(NHLBI)は2月24日、特発性の静脈血栓症患者を対象に実施していた低用量ワルファリンとプラセボとの比較試験を、予定より2年早く中断したと発表した。低用量ワルファリン群の血栓症再発予防効果が予想よりも大きく、副作用に有意差がなかったため。研究結果はNew England Journal of Medicine(NEJM)誌4月10日号に掲載予定で、2月24日からNEJM誌ホームページ上で早期公開された。

 この臨床試験「PREVENT」(the multi-center Prevention of Recurrent Venous Thromboembolism)は、1998年からスタートした無作為化プラセボ対照二重盲検試験。特発性の静脈血栓症患者に対する二つの治療戦略を比較するもので、2005年までの追跡が予定されていた。

 外傷や手術など明確な原因が無い、特発性の静脈血栓症患者の治療では、「どれだけの量のワルファリンをいつまで飲み続けるか」が大きな課題となっている。一般に、まずヘパリンで血栓を溶解した後、中用量のワルファリン(プロトロンビン時間:国際標準比=INRで2.0〜3.0)を3〜12カ月内服させるのが基本だが、服用期間や服用量を巡る議論は尽きなかった。

 そこで研究グループは、中用量のワルファリンを半年程度服用した後、「ワルファリンの用量を減らして服用を続行する」(目標INR:1.5〜2.0)との戦略と、「ワルファリンの服用を止める」(プラセボを服用する)との戦略とを比較する臨床試験を実施。2002年末までに508人を登録したが、その時点で行われた中間解析で、低用量ワルファリン群での血栓症再発率がプラセボ群より相対的に64%低いことが判明。試験の早期中断に至ったという。

 対象患者の平均年齢は53歳でほぼ半数が女性、9割弱が白人。平均体格指数(BMI)は約30で、糖尿病合併者は1割弱、4割に2回以上の静脈血栓塞栓症発症歴、3割に静脈血栓塞栓症の家族歴があった。血液凝固第5因子遺伝子の点変異(Leiden)など、血液凝固関連の遺伝子変異が確認された患者は3割。割り付けまでの中用量ワルファリン服用期間の中央値は6.5カ月、割り付け後の追跡期間は最長4.3年、平均2.1年だった。

 その結果、プラセボ群(253人)の静脈血栓塞栓症再発率が年間7.2%だったのに対し、低用量ワルファリン群(255人)では年間2.6%で、プラセボ群よりも64%有意に低いことが判明(ハザード比:0.36、95%信頼区間:0.19〜0.67)。遺伝子変異の有無とリスク低下率とには関連がみられなかった。

 一方の副作用は、重大な出血がプラセボ群の二人、低用量ワルファリン群の5人にみられた。また、プラセボ群の8人、低用量ワルファリン群の4人が、追跡期間中に死亡した。静脈血栓塞栓症の再発、重大な出血と総死亡を合わせた複合評価項目への到達率は、低用量ワルファリン群がプラセボ群を相対的に48%下回った。

 「特発性静脈血栓塞栓症の二次予防では、6カ月でワルファリンの服用を止めるより、6カ月以降も目標INRを1.5〜2.0に下げてワルファリンの服用を続けた方が良い」との結果だが、NEJM誌に同時掲載される論説(editorial)では、米国Pennsylvania大学医学部のAndrew I. Schafer氏が結果の解釈に注意を促している。別の無作為化二重盲検試験で、INRを2.0〜3.0に保ったまま服用を続けた群の方が、INRを1.5〜2.0に下げて服用を続けた群よりも血栓再発予防効果が高いとの予備的な結果が昨年報告されているためだ(Blood;100,150a,2002)。

 Schafer氏は、ヘパリン治療後数カ月、中用量のワルファリンを服用した後で、1.ワルファリンの服用を止める、2.ワルファリンの用量を減らして服用を続ける、3.ワルファリンの用量を減らさず服用を続ける−−の三つの戦略のどれが優れているかは、この三つの戦略を直接比較し、リスクと利益のバランスをみない限り結論は出せないと強調している。

 この件に関するNIHのプレス・リリースは、こちらまで。早期公開された論文「Long-Term, Low-Intensity Warfarin Therapy for the Prevention of Recurrent Venous Thromboembolism」のアブストラクトはこちら、論説「Warfarin for Venous Thromboembolism -- Walking the Dosing Tightrope」のアブストラクトはこちらまで。

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